
住宅ローンの申し込みを受け付けた金融機関は、年収、職業(勤務先)、勤続年数、年間返済負担率、物件の担保価値などから総合的に審査します。審査では「そもそも貸せるか」だけでなく「いくら貸せるか」も決まります。
ここで見落とされがちなのが、住宅ローンの審査はひとつではないという点です。保証会社を利用する住宅ローンでは実質的な審査は保証会社が行い、健康状態の審査は、団体信用生命保険(団信)を引き受ける生命保険会社が行います。
つまり、病歴や治療歴を理由に住宅ローンの審査に落ちた場合、実際に否決したのは銀行ではなく保険会社です。この記事では、団信の加入審査に落ちた場合に取れる対策を、各社の公式情報にもとづいて整理します。
住宅ローンの審査は「3者」が見ている
| 審査する主体 | 主に見るもの | 落ちたときの意味 |
|---|---|---|
| 金融機関 | 年収・勤続年数・返済負担率・他の借入・物件の担保価値 | 返済能力または担保評価が基準に届かなかった |
| 保証会社 | 同上(保証を引き受けられるか) | 保証会社の基準に届かなかった。別の保証会社なら結果が変わることもある |
| 生命保険会社(団信) | 健康状態・病歴・治療歴・服薬の状況 | 団信に入れない=原則として住宅ローンを借りられない |
否決の理由は原則として開示されません。ただし、健康状態について詳しく聞かれた後に否決された場合は団信が原因である可能性が高いと考えられます。この場合、年収を上げたり頭金を増やしたりしても結果は変わりません。打ち手がまったく別になるため、まずどの審査で落ちたのかを見極めることが重要です。
団信(団体信用生命保険)とは
団信とは、債務者が死亡・所定の高度障害状態などになった場合に、保険会社から支払われる保険金で住宅ローン残高が返済される仕組みです。近年は一般団信の保険料が上乗せ0円のケースが多く追加負担はありませんが、民間の住宅ローンでは基本的に加入が必須です。
住宅ローンを利用するには団信に加入する必要があり、団信に加入するには加入審査に通る必要がある——これが「健康状態で住宅ローンに落ちる」仕組みです。

対策1:引受保険会社が異なる住宅ローンに申し込む
団信の審査を行っているのは銀行ではなく保険会社です。したがって、ある住宅ローンの団信に落ちたあと、同じ保険会社が引き受けている別の住宅ローンに申し込んでも、同じ結果になる可能性が高いと考えておくべきです。
逆にいえば、引受保険会社が異なる住宅ローンを選べば、結果が変わる可能性があります。保険会社ごとに引受基準は同じではないためです。
引受保険会社は、各金融機関の団信ページや商品概要説明書に記載されています。たとえばソニー銀行は、団信のページで引受保険会社をクレディ・アグリコル生命保険株式会社と明記しています(2026年8月時点・公式サイトにて確認)。クレディ・アグリコル生命は住宅ローンの団信を幅広く引き受けている保険会社の一つで、複数の金融機関で採用されています。
一方で、引受保険会社を公式サイトに明示していない金融機関もあります。本記事で各行の引受保険会社を一覧化しない理由もここにあります。申込前に、各金融機関の商品概要説明書・団信の案内で必ず確認してください(コールセンターで質問すれば教えてもらえることもあります)。
- 次に申し込む住宅ローンの引受保険会社が前回と違うかを確認する
- ワイド団信(引受条件緩和型団信)を扱っているかを確認する
- 団信の加入が任意の商品(フラット35など)も候補に入れる
- 短期間に何件も申し込みを重ねない(申込情報は信用情報に記録されます)
なお、SBI新生銀行の住宅ローンは、一般団信のほかガン団信(金利 年0.100%上乗せ)と全疾病保障付団信の2つのプランから選ぶ形になっています(2026年8月時点・公式サイトにて確認)。なお、団体信用介護保障保険(安心保障付団信)は新規申し込みを終了していますので、古い情報のまま「介護保障が付けられる」と考えないよう注意してください。
対策2:ワイド団信(引受条件緩和型団信)を検討する
ワイド団信とは、通常の団信には加入できない健康状態と判断された人向けに、引受基準を緩和した団信です。高血圧・糖尿病・肝炎・うつ病などを理由に一般団信の審査に通らなかった人でも、加入できる場合があります。
ただしワイド団信も審査があり、健康上の理由があるすべての人が加入できるわけではありません。また、通常は金利の上乗せが必要です。
ワイド団信はすべての金融機関が扱っているわけではなく、とくにネット系の住宅ローンでは取扱いのない先もあります。取扱いのある一例として、ソニー銀行の団信プランを挙げます(2026年8月時点・公式サイトにて確認)。
| 団信プラン | 上乗せ金利(年利) | 加入時年齢 | 完済時年齢 |
|---|---|---|---|
| 一般団信 | なし | 満65歳未満 | 満85歳未満 |
| ワイド団信(引受基準緩和型) | 年0.200% | 満65歳未満 | 満81歳未満 |
| がん団信50(がん50%保障特約付き) | なし | 満50歳未満 | 満85歳未満 |
| がん団信100(がん100%保障特約付き) | 年0.100% | 満50歳未満 | 満85歳未満 |
| 3大疾病団信 | 年0.200% | 満50歳未満 | 満85歳未満 |
| 生活習慣病団信 | 年0.200% | 満50歳未満 | 満85歳未満 |
※ソニー銀行の団信の引受保険会社はクレディ・アグリコル生命保険株式会社。ワイド団信は完済時年齢の上限が満81歳未満と、一般団信(満85歳未満)より短い点に注意してください。年齢によっては借入期間が制限されます。最新の取扱い・条件は公式サイトでご確認ください。
ワイド団信の上乗せ幅は金融機関によって異なります。「ワイド団信があるか」だけでなく「上乗せ幅はいくらか」「完済時年齢の上限はいくつか」まで比較するのが実務的な選び方です。
auじぶん銀行のワイド団信についてはこちらの記事でも紹介しています。
対策3:団信の加入が任意のフラット35を使う
民間の住宅ローンは団信への加入が原則必須ですが、フラット35は団信に加入しなくても利用できます。住宅金融支援機構も「健康上の理由その他の事情で団体信用生命保険に加入されない場合も【フラット35】をご利用いただけます」と明記しています(2026年8月時点・機構公式にて確認)。
しかも、団信に加入しない場合は掲載金利から金利が下がります。ワイド団信のように上乗せするのではなく、逆に引き下げられる点が特徴です。
| 商品 | 団信に加入しない場合の金利 | 出典(2026年8月時点) |
|---|---|---|
| フラット35(新機構団信付きの掲載金利に対して) | 年▲0.200% | 住宅金融支援機構・取扱金融機関の公表 |
| SBIアルヒ スーパーフラット(団信C加入時の金利に対して) | 年▲0.280% | SBIアルヒ公式サイト |
ただし団信に入らないということは、万一のときにローンが残るということです。金利が下がるからお得、と単純に考えず、その分を民間の生命保険(収入保障保険など)で手当てできるかをセットで検討してください。持病があると民間の生命保険にも入りにくい場合があるため、住宅ローンの申し込みより先に、加入できる保険があるかを確認しておくと手戻りがありません。
なお、フラット35は取扱金融機関ごとに適用金利と融資事務手数料が異なります。SBIアルヒが取り扱うフラット35・スーパーフラットの詳細はこちらで確認できます。
※SBIアルヒはフラット35の実行件数で最大手です(※2010年度-2025年度統計、取り扱い全金融機関のうち借り換えを含む【フラット35】実行件数(2026年3月末現在、SBIアルヒ調べ))。
対策4:告知は正確に、そして申し込みの順番を考える
団信の告知は正確に行ってください。事実と異なる告知をした場合、告知義務違反として契約が解除され、いざというときに保険金が支払われない可能性があります。「黙っていれば通るかもしれない」は、最悪の結果を招きます。
もうひとつ実務的なポイントが申し込みの順番です。健康状態に不安がある場合、先にワイド団信や団信任意の商品を扱う金融機関に相談しておくと、一般団信で否決されてから慌てて探す事態を避けられます。住宅の引渡し日が決まっている場合はとくに、やり直す時間があるかどうかが現実的な制約になります。
また、短期間に多数の住宅ローンへ申し込むと、その申込情報が信用情報機関に記録されます。やみくもに数を撃つのではなく、引受保険会社と団信の選択肢を確認してから絞り込むほうが結果的に近道です。
健康を理由に落ちたときのよくある質問
Q. 団信に落ちた理由は教えてもらえますか?
A. 否決の理由は原則として開示されません。ただし、告知した内容のどこが引っかかったかは推測できます。治療が終わって一定期間が経過している、数値が改善しているといった変化があれば、時期を改めて再申込することで結果が変わる場合もあります。
Q. ワイド団信でも落ちた場合はどうすればよいですか?
A. 引受保険会社の異なるワイド団信を探すか、団信の加入が任意であるフラット35を検討するのが現実的な選択肢です。フラット35は団信に加入しなくても利用でき、その場合は掲載金利から年▲0.200%となります(スーパーフラットは団信C加入時の金利から年▲0.280%)。
Q. 健康診断で軽い指摘を受けているだけでも落ちますか?
A. 判断は保険会社の基準によります。指摘の内容・数値・治療の有無・服薬の状況などを総合的に見るため、一律の答えはありません。同じ内容でも保険会社が違えば結果が変わることがあるのは、この基準の差によるものです。
Q. 団信に入れないと、住宅の購入自体をあきらめるしかないのでしょうか?
A. そうとは限りません。ワイド団信、引受保険会社の異なる住宅ローン、団信任意のフラット35という3つの道が残っています。焦って審査基準の緩さだけを理由に極端に条件の悪い借入先を選ぶより、まずこの3つを順に確認してください。
まとめ
健康状態を理由に住宅ローンの審査に落ちた場合、判断したのは銀行ではなく保険会社です。だからこそ、年収や頭金ではなく「団信の選び方」を変えるのが正しい打ち手になります。
| 打ち手 | 内容 | コスト |
|---|---|---|
| 引受保険会社を変える | 別の保険会社が引き受ける住宅ローンに申し込む | 原則なし(商品ごとの金利差はある) |
| ワイド団信 | 引受基準を緩和した団信に加入する | 金利の上乗せ(例:ソニー銀行は年0.200%) |
| 団信に入らない | 団信が任意のフラット35を利用する | 金利は下がるが保障がない(別途の生命保険を検討) |
いずれの道を選ぶ場合も、引受保険会社・ワイド団信の有無・上乗せ幅・完済時年齢の上限は、必ず各金融機関の公式サイトと商品概要説明書で確認してください。団信の取扱いは商品改定で変わることがあり、古い情報のまま進めると同じところでつまずきます。
住宅ローンの審査基準そのものについてはこちらの記事で解説しています。

