
結論:短期金利は「日銀の政策」、長期金利は「市場の予想」で決まる
住宅ローンは、どの金融機関で借りるかと同じくらい金利タイプ選びが重要です。そして変動金利と固定金利は、そもそも参照している金利が違い、決まり方も違います。先に結論を3行で整理します。
・短期金利=日銀の政策金利(無担保コール翌日物)に強く連動 → 銀行の短期プライムレートを経由して変動金利に反映される。
・長期金利=10年国債利回りが代表。物価や景気の先行き予想と国債の需給で、日々市場で決まる → 固定金利・フラット35に反映される。
・したがって、変動金利は「日銀が動いたか」、固定金利は「長期金利が動いたか」を見る。両者は同じ方向に動くとは限りません。
金利そのものの定義は、日本銀行の解説(教えて!にちぎん「長期金利」、同「長期プライムレート、短期プライムレート」)が一次情報です。以下では、それが住宅ローンの金利にどう伝わるのかを、2026年7月時点の実際の数字で追っていきます。
短期金利(=変動金利のもと)はこう決まる
短期金利は、日銀の金融政策でほぼ決まります。伝わり方は次の3段階です。日銀の政策金利 → 銀行の短期プライムレート(短プラ) → 各行の変動金利の基準金利 → 優遇幅を引いた適用金利
2026年に入ってからの実際の動きは、この流れがそのまま起きています。
① 日銀の政策金利は1.0%程度(2026年6月16日決定)
日本銀行は2026年6月15〜16日の金融政策決定会合で追加利上げを決め、政策金利は1.0%程度になりました。1995年以来、約31年ぶりの水準です(出典:日本銀行)。マイナス金利解除(2024年3月)以降、日銀は段階的に利上げを進めてきました。② 短期プライムレートが上がる(2026年8月3日〜)
政策金利の引き上げを受け、三菱UFJ銀行・みずほ銀行・三井住友銀行は2026年8月3日から短期プライムレートを年2.125%→年2.375%へ引き上げると公表しています(+0.25%=日銀の利上げ幅と同じ。出典:三菱UFJ銀行「短期プライムレートの改定について」)。短プラの推移は日本銀行の統計で確認できます。③ 変動金利の基準金利が見直される(時期は銀行ごとに違う)
ここが誤解の多いところです。「変動金利の見直しは一律10月」ではありません。 たとえば三菱UFJ銀行は、2026年6月16日発表の短プラ引き上げに伴い2026年9月1日から住宅ローンの変動金利の基準金利を見直すと公式に告知しています(9月分の基準金利は8月31日に発表。出典:三菱UFJ銀行「【住宅ローン】変動金利の基準金利見直しについて」)。一方、年2回(4月1日・10月1日)の基準日で見直す仕組みの銀行も多く、見直し時期は各行の公表で確認するのが確実です。なお、「基準金利が見直される時期」と「毎月の返済額が変わる時期」は別物です。多くの変動金利・元利均等返済には5年ルール(5年間は返済額が変わらない)と125%ルール(見直し後の返済額は従前の125%まで)があり、金利が上がっても当面は元金と利息の内訳が変わるだけ、という契約が少なくありません(これらのルールがない商品もあります)。ご自身の契約条件は必ず金銭消費貸借契約書・商品説明書で確認してください。
長期金利(=固定金利のもと)はこう決まる
長期金利は、日銀が直接決めるものではありません。10年国債の利回りを代表として、市場参加者が「この先の物価・景気はどうなるか」を予想し、国債を売り買いした結果として日々決まります。物価上昇(インフレ)が続くと予想されれば上がり、逆なら下がります。加えて、国の財政や年金資金の動きといった需給要因でも大きく振れます。2026年7月は、まさにその「振れ」がはっきり出た月でした。新発10年国債利回りは7月9日に一時2.900%と約30年ぶりの高水準を付けた後、7月14日にはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用見直し観測や20年国債入札の好調を受けて一時2.73%程度まで低下しています(出典:日経マーケットデータ「日本国債10年」)。1週間で大きく往復するのが長期金利だ、と理解しておくと十分です。
この長期金利を原資にしているのが、10年固定・全期間固定・フラット35です。【フラット35】の2026年7月の借入金利は年3.140%(返済期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付き。前月比−0.07%)、フラット20は年2.820%でした(出典:住宅金融支援機構【フラット35】金利情報)。
短期金利と長期金利の違い(早見表)
| 比較の観点 | 短期金利 | 長期金利 |
|---|---|---|
| 代表的な指標 | 無担保コール翌日物(=日銀の政策金利)、短期プライムレート | 新発10年国債利回り |
| 誰が動かすか | 日銀の金融政策(政策的に決まる) | 市場参加者の売買(予想と需給で決まる) |
| 主な変動要因 | 利上げ・利下げの判断(物価・賃金・景気) | 物価の先行き予想、財政・国債需給、海外金利 |
| 住宅ローンでの現れ方 | 変動金利(短プラ連動が主流) | 固定金利期間選択型・全期間固定・フラット35 |
| 反映のスピード | 政策変更→短プラ→基準金利と段階的(数か月のタイムラグ) | 市場で日々変動し、各行が毎月の金利に反映 |
| 2026年7月時点の水準 | 政策金利1.0%程度/短プラは8月3日に年2.375%へ(3メガ) | 10年国債は2.7〜2.9%台で乱高下(7月9〜14日) |
2026年7月、実際の住宅ローン金利はどう動いたか(当社実測)
当社編集部は毎月、各金融機関の公式サイトの住宅ローン金利ページを実際に開いて表示金利を取得し、集計しています。2026年7月は、主要14の金融機関(住宅金融支援機構=フラット35買取型を含む)について125件の適用金利を確認しました(当社調べ・2026年7月1日確認)。前月と比較できた113件の内訳は次のとおりです。
変動金利は26件中21件が据え置きだった一方、フラット35・全期間固定を含む長期の固定金利では引き下げが目立つという、冒頭の「短期と長期は別々に動く」がそのまま出た1か月でした。ただし短プラ引き上げは8月3日から適用されるため、変動金利は今後、時間差で上昇に転じる可能性が高い点に注意してください(各行の適用時期は個別に公表されます)。
※上記は当社が実測できた範囲の件数であり、市場全体の統計ではありません。件数は「銀行×商品×借入区分×金利タイプ×期間×融資率」の組み合わせ数で、フラット35は同一の機構金利を取扱各社に計上しています。最新の適用金利は各金融機関の公式サイトでご確認ください。
変動か固定か、どう考えるか
住宅金融支援機構の調査(2026年1月調査)では、住宅ローン利用者の変動型の比率は75.0%、固定期間選択型14.9%、全期間固定型10.1%でした(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査」)。依然として変動型が主流ですが、前回調査(79.0%)からは低下しており、金利上昇局面で選択が分散し始めていることがうかがえます。考え方の整理は、次のシンプルな一点に尽きます。「金利が上がっても返済を続けられるか」を先に確認することです。
- 変動金利が向く人:借入額が年収に対して控えめ、繰上返済に回せる余力がある、金利が1〜2%上がっても家計が耐えられる。
- 固定金利が向く人:教育費などの支出が読みにくく、返済額を確定させたい。長期金利が高止まりしている今は、当初の返済額が変動より重くなる点は許容する必要があります。
- ミックス(変動+固定の組み合わせ)が向く人:どちらか一方に賭けたくない人。金利上昇リスクと当初返済額の重さを、両方とも「半分」に薄める発想です。当サイトで紹介している住宅ローンの多くがミックスに対応しているので、審査に通ったら金融機関の担当者に相談してみてください。
金利タイプの比較検討では、SBI新生銀行も選択肢の一つとして挙げられます。保証料・一部繰上返済手数料が0円、一般団信の上乗せ0円で、変動金利は2026年7月1日時点の当社確認で年0.990%(SBIハイパー預金の適用時。SBI新生銀行 公式)と、7月は据え置きでした。店舗相談とオンライン手続きの両方に対応している点も、はじめて借りる人には安心材料になります。最新の適用金利・条件は必ず公式サイトでご確認ください。
よくある質問
Q. 日銀が利上げしたら、変動金利はすぐに上がりますか?
すぐには上がりません。政策金利→短期プライムレート→各行の基準金利、という段階を踏むためです。2026年6月16日の利上げに対し、3メガバンクの短プラ引き上げは8月3日、三菱UFJ銀行の住宅ローン基準金利の見直しは9月1日と、数か月のタイムラグがあります。さらに5年ルールがある契約では、毎月の返済額が変わるのはもっと先になります。Q. 長期金利が下がれば、固定金利もその月に下がりますか?
必ずしも連動しません。各行の固定金利は毎月改定されるのが一般的で、前月までの長期金利の水準や資金調達コストを踏まえて決まります。フラット35の場合は、前月に発行される機構債(貸付債権担保住宅金融支援機構債券)の利率が翌月金利のベースになります。Q. 長期金利は日銀がコントロールしているのでは?
かつての「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」では10年国債利回りに操作目標がありましたが、この枠組みは2024年3月に撤廃されています。現在の長期金利は市場の需給と予想で決まっており、2026年7月のように政治・年金資金の思惑で1週間に十数bp単位で振れることもあります。Q. 短期プライムレートは自分で確認できますか?
できます。主要行の短期・長期プライムレートの推移は日本銀行の統計ページで公表されています。借入中の方は、自分の契約が短プラ連動か、基準日はいつかを契約書で確認しておくと、ニュースの読み方が変わります。Q. 今から借りるなら、金利上昇を織り込んでどう試算すべきですか?
金融機関のシミュレーションで、現在の適用金利に加えて「+1%」「+2%」で毎月返済額を出してみるのが実務的です。返済額が家計の許容範囲を超えるなら、借入額を抑えるか、固定・ミックスで金利を確定させる判断が現実的になります。まとめ
短期金利は日銀の政策で、長期金利は市場の予想と需給で決まる——この一点を押さえておけば、日々の金利ニュースが「自分の住宅ローンのどこに効く話なのか」を切り分けられます。2026年は政策金利1.0%・短プラ引き上げという変動金利に効く材料と、長期金利の乱高下という固定金利に効く材料が同時に走っている局面です。金利タイプは「予想を当てるゲーム」ではなく、上がったときに耐えられるかどうかの設計です。各行の最新金利・諸費用・団信を横並びで比較したうえで、ご自身の家計に合う組み合わせを選んでください。金利は随時改定されるため、最新の適用金利・条件は必ず各金融機関の公式サイトでご確認ください。

