
住宅ローンの比較というと金利や事務手数料に目が向きがちですが、返済口座として使う銀行のATM利用手数料も、長い付き合いのなかでは無視できないコストです。とくに近年は各行が「優遇プログラム」でステージ(ランク)を判定し、そのステージに応じて無料回数を決める方式に移行しています。
このコラムでは、住宅ローンの取扱いがある主要銀行のATM手数料を、「どんな仕組みで無料になるのか」「住宅ローンの契約が優遇に効くのか」という2つの軸で整理します(2026年7月時点の各行公式サイトの記載にもとづきます)。
ATM手数料は「一律無料」から「ステージ制」へ
かつては「コンビニATMなら24時間365日いつでも無料」といった分かりやすい打ち出しが目立ちましたが、現在は取引状況に応じたステージ判定で無料回数が変わる方式が主流です。同じ銀行でも、預金残高・給与受取・投資信託・住宅ローンなどの利用状況によって、無料回数が0回にも無制限にもなり得ます。
したがって比較の際は、「その銀行のATM手数料はいくらか」ではなく、「自分の使い方でどのステージになり、何回無料になるか」を確認する必要があります。
主要銀行のATM手数料の仕組み
| 銀行名 | 優遇プログラム | ATM手数料の考え方(2026年7月時点) |
|---|---|---|
| SBI新生銀行 | ステップアッププログラム | セブン銀行・ローソン銀行・イーネット・イオン銀行などの提携ATMは、シルバー以上のステージなら出金手数料が何回でも無料。スタンダードステージでも月5回までは無料(6回目から1回110円・税込)。ただしゆうちょ銀行ATM・全都市銀行ATM・三菱UFJ信託銀行ATM・三井住友信託銀行ATMはステージを問わず1回110円(税込)。 |
| ソニー銀行 | Club S(シルバー/ゴールド/プラチナ) | 預け入れは何回でも無料。引出(カードローン借入との合算)は無条件で月4回まで無料で、Club Sのステージに応じて無料回数が上乗せされる。超過分は1回110円(税込)。ステージ判定の対象に住宅ローンが含まれる。 |
| 住信SBIネット銀行 | スマートプログラム(スマプロランク) | ランクに応じてATM・振込の無料回数が決まる方式。2026年5月にランク判定条件と特典内容が改定され、5段階のランク構成に。加えて「アプリでATM」「ことら送金」は何度でも手数料無料。 |
| 楽天銀行 | ハッピープログラム(5ステージ) | 会員ステージに応じてATM手数料の無料回数が決まる。無料回数は翌月に繰り越されない点に注意。 |
| イオン銀行 | イオン銀行の会員ステージ制度 | 自行ATMのほか、ミニストップ等に設置のATMを中心に利用しやすい。無料回数はステージ判定によるため、条件は公式サイトで要確認。 |
| りそな銀行 | グループ共通の優遇サービス | りそなグループ各行のATMと提携ATMの両方を使える店舗型。利用するATM・時間帯によって手数料が変わるため、平日日中中心の使い方かどうかで有利不利が分かれる。 |
※手数料・無料回数・ステージ判定条件は改定されます。上表は仕組みの整理であり、実際に適用される金額と回数は必ず各行の公式サイト(手数料一覧・優遇プログラムのページ)でご確認ください。
住宅ローン契約が「ATM優遇」に効く銀行・効かない銀行
住宅ローンを比較する立場から見て重要なのは、住宅ローンを契約することでATM手数料の優遇が上がるかどうかです。
- 効きやすいタイプ…優遇プログラムのステージ判定に「住宅ローンの利用」が含まれている銀行。ソニー銀行のClub Sは、各種預金・投資信託・住宅ローン・FXなどの取引状況でステージを判定すると公式に明記しています。
- 判定条件の確認が必要なタイプ…住信SBIネット銀行のスマートプログラムは2026年5月に判定条件が改定されました。過去の記事や口コミにある「住宅ローンがあれば月◯回無料」という情報は現行の条件と異なる可能性があるため、必ず最新のランク表で確認してください。
- 効きにくいタイプ…ATM優遇が預金残高や決済サービスの利用で決まる銀行では、住宅ローンの有無は無料回数に直結しません。この場合、ATM手数料は「住宅ローンを選ぶ理由」にはなりにくく、給与受取などメインバンクを移すかどうかの判断材料として見るのが実態に合います。
そもそもATMを使わない、という選択肢も増えた
近年は、ATM手数料そのものを回避する手段が広がっています。
- スマホアプリでの入出金…住信SBIネット銀行の「アプリでATM」は、キャッシュカードを使わずアプリで入出金でき、何度でも手数料無料と公式に案内されています。
- ことら送金…10万円以下の個人間送金を無料で行える仕組みで、住信SBIネット銀行でも何度でも無料で利用できます。現金を引き出して手渡しする場面を減らせます。
- キャッシュレス決済の活用…デビットカード・コード決済の利用が増えるほど、そもそもの出金回数が減ります。
「無料回数の多さ」だけで比較する時代から、「そもそも何回ATMを使うのか」から逆算する時代に変わってきているといえます。
自分にとってのメリット額を計算する手順
ATM手数料の差は、次の3ステップで金額に落とし込めます。
- 直近3カ月の出金回数を数える…通帳・アプリの明細で、月に何回ATMから引き出しているかを確認します。
- 自分が到達しそうなステージを確認する…各行の優遇プログラムのページで、預金残高・給与受取・住宅ローンなどの条件を照合します。
- 「回数 − 無料回数」×手数料 × 12カ月で年額にする…提携ATMの超過手数料は1回110円(税込)としている銀行が多く、月2回超過するだけでも年間で2,640円(税込)の差になります。
この金額を、金利差による年間の利息差と並べてみると、ATM手数料は「決め手にはならないが、条件が拮抗したときの最後のひと押しになる」という位置づけがはっきりします。
ATM手数料についてのよくある質問
Q. コンビニATMなら、どの銀行でも無料になりますか?
A. いいえ。無料になる提携先はステージや銀行ごとに決まっています。たとえばSBI新生銀行は、提携コンビニATM等は条件次第で無料になる一方、ゆうちょ銀行ATMや都市銀行ATMはステージを問わず1回110円(税込)と明記されています。「コンビニATM」と「銀行ATM」で扱いが違う点は要注意です。
Q. 預け入れ(入金)にも手数料はかかりますか?
A. 銀行によります。ソニー銀行はATMでの預け入れは何回でも無料と公式に案内しています。出金だけを見て比べると、実際の使い勝手を読み違えることがあります。
Q. 無料回数が余ったら翌月に繰り越せますか?
A. 楽天銀行は余った無料回数の翌月繰り越しはないと公式に明記しています。多くの銀行が同様の扱いなので、「月あたり何回使うか」で判断するのが安全です。
Q. ステージは毎月変わりますか?
A. 判定のタイミングは銀行ごとに異なります。たとえばソニー銀行のClub Sはステージアップ判定は毎月、ステージダウン判定は3月末と9月末のみという設計です。残高が一時的に減っても即座に優遇がなくなるとは限りません。
Q. 住宅ローンの返済口座と、普段使いの口座は分けるべきですか?
A. 分けても構いませんが、優遇プログラムは「その銀行にどれだけ取引を集約したか」で判定されることが多いため、集約したほうがステージは上がりやすくなります。給与受取・引落し・住宅ローンをまとめると手数料面では有利になりやすい一方、家計管理のしやすさとのバランスで決めましょう。
まとめ
ATM手数料は、「一律いくら」ではなく「ステージ次第」というのが現在の姿です。住宅ローンの比較においては、金利・事務手数料・団信を一次的な軸としつつ、その銀行をメインバンクにするかどうかを決める段階でATM手数料と優遇プログラムを確認するのが合理的な順序といえます。
各行とも判定条件や無料回数の改定が続いているため、最新の手数料と条件は必ず各金融機関の公式サイトでご確認ください。
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