
繰上返済とは、毎月の約定返済とは別にまとまった資金でローン残高(元金)を前倒しで返すことで、返したお金はまるごと元金に充当されるため、その元金にかかるはずだった将来の利息が消えます。主要なネット系銀行では一部繰上返済の手数料は無料が標準になっており、差がつくのはむしろ全額繰上返済(完済)の手数料・最低金額・選べる返済方式のほうです。ここでは4行の実際の条件を横並びにしながら、手数料・2つの方法(期間短縮型/返済額軽減型)・注意点を整理します。
繰上返済の効果は「借入初期ほど大きい」
返済したお金がすべて元金に充当されるため、まだ元金が多く残っている借入初期ほど利息軽減の効果が大きいのが繰上返済の特徴です。逆に、返済終盤は残った元金が小さく利息もわずかなので、同じ金額を入れても軽減額は小さくなります。「早いうちに、無理のない範囲で」が基本方針になります。
繰上返済に手数料はかかるの?
ひと昔前は繰上返済のたびに3万円前後の事務手数料が必要な金融機関が多くありましたが、現在は一部繰上返済の手数料を無料にしている金融機関が主流です。特にネット銀行やインターネットからの手続きは無料が一般的で、差がつくのは全額繰上返済(完済)のほうです。
下表は主要なネット系銀行4行の条件です(いずれも2026年9月に各行公式サイトで確認)。
| 金融機関 | 一部繰上返済 | 全額繰上返済 | 一部繰上返済の最低金額(公式記載) |
|---|---|---|---|
| SBI新生銀行 | 無料(いつでも何度でも) | 0円 ※安心パックW利用者が借入日から5年以内に完済する場合は165,000円(税込) | 1円から(パワーダイレクト) |
| ソニー銀行 | 無料(回数無制限) | 無料 | 1万円から |
| ドコモSMTBネット銀行(旧・住信SBIネット銀行) | 無料(変動金利期間中・固定金利特約期間中とも) | 変動金利期間中:無料 固定金利特約期間中:33,000円(税込) | 公式の手数料案内に記載なし |
| イオン銀行 | 無料 | 55,000円(税込) | 1万円以上1円単位(イオン銀行ダイレクト) ※期間短縮型は返済方式ごとに最低単位あり |
出典:SBI新生銀行 住宅ローンの手数料・諸費用/ソニー銀行 借りた後に差がつきます/ドコモSMTBネット銀行 住宅ローン 手数料のご案内/イオン銀行 住宅ローン 繰上返済のお手続き(インターネット)(いずれも2026年9月確認)
このように一部繰上返済はネット銀行では無料が中心ですが、全額繰上返済は無料の銀行と有料の銀行に分かれます。とくに固定金利期間中の全額繰上返済に手数料がかかる銀行がある点に注意してください。銀行は固定金利で貸す際に将来の金利変動リスクをカバーするコストを負担しているため、その期間中の完済にコストを求めるケースがあるためです。借り換えを視野に入れているなら、いま借りている銀行の「完済手数料」を先に確認しておくと、借り換え効果の試算が現実的になります。
なかでもSBI新生銀行は、一部繰上返済が1円から・いつでも何度でも手数料0円で、インターネットバンキング(パワーダイレクト)から手軽に行えます。全額繰上返済も原則0円で、コツコツ返済したい人には使い勝手のよい選択肢の一つです(安心パックWを利用している場合の5年以内完済のみ例外)。
繰上返済はいくらから?
繰上返済の最低金額は金融機関によって異なり、1円から可能な銀行もあれば、1万円からという銀行もあります。手数料が無料で少額から返済できる銀行なら、ボーナスや臨時収入のたびに「コツコツ繰上返済」する使い方がしやすくなります。反対に、手数料がかかる場合は、ある程度まとまった金額でないと軽減できる利息より手数料のほうが高くつくこともあるため、手数料と最低金額はセットで確認しましょう。
繰上返済の2つの方法 期間短縮型と返済額軽減型
繰上返済には『期間短縮型』と『返済額軽減型』の2種類があります。
| 種類 | 毎月の返済額 | 返済期間 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 期間短縮型 | 変わらない | 短くなる | 総返済額(利息)をできるだけ減らしたい人 |
| 返済額軽減型 | 減る | 変わらない | 毎月の家計負担を軽くしたい人 |
一般的に選ばれることが多いのは『期間短縮型』です。毎月の返済額は変えずに残りの返済期間を縮めるため、将来の利息軽減効果は返済額軽減型より大きくなります。一方、毎月の返済が負担に感じるようになった場合は『返済額軽減型』で月々の返済額を下げることもできます。
ただし、両方を選べるとは限りません。たとえばSBI新生銀行は公式の繰上返済ページで「当行では期間短縮型のみのお取り扱いとなります」と明記しています(2026年9月確認)。将来「毎月の返済額を下げる」使い方も残しておきたいなら、手数料だけでなく、選べる返済方式まで確認しておくと後悔がありません。
繰上返済で気をつけたいこと
1. 手元の資金を使いすぎない。 繰上返済を無理に行って家計の貯蓄を取り崩しすぎると、病気・失業・教育費など、いざというときの備えが不足しかねません。生活防衛資金や近い将来に必要なお金は残し、無理のない範囲で行うのが基本です。
2. 住宅ローン控除への影響。 住宅ローン控除(減税)は「償還期間10年以上」が要件の一つです(国税庁 No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合)。期間短縮型の繰上返済で、借入当初から通算した返済期間が10年未満になると、その年以降は控除を受けられなくなる場合があります。イオン銀行も公式の注意事項で同じ点に触れています。控除期間中は短縮しすぎに注意しましょう。
3. 金利環境も踏まえて。 日銀の政策金利は2026年6月16日の利上げで1.0%程度となり、主要行の短期プライムレートも2026年8月3日から年2.375%へ引き上げられました(日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移」)。変動金利は今後、各行の基準金利の見直しを通じて時間差で上がっていく局面にあり、利息を減らす繰上返済の価値は以前より高まっています。とはいえ手元資金を厚く保つ意味も変わらないため、繰上返済を「必ず最優先」と決め打ちせず、金利・家計・目的のバランスで判断してください。金利がどこを経由して自分のローンに届くのかは、長期金利と短期金利の決まり方で整理しています。また、金利が上がっても毎月の返済額がすぐには変わらない仕組みについては5年ルール・125%ルールの解説をご覧ください。
4. 借り換えという選択肢と比べる。 まとまった資金を入れて利息を減らす繰上返済に対し、借り換えは金利そのものを下げる手段です。どちらが有利かは残高・残年数・金利差・諸費用で変わるため、借り換えの審査条件もあわせて確認し、両方を並べて比べるのが確実です。
よくある質問(FAQ)
Q. 繰上返済の手数料は本当に無料ですか?
A. 一部繰上返済は、ネット銀行やインターネット手続きでは無料が主流です。ただし、全額繰上返済(完済)は有料の銀行があり、イオン銀行は55,000円(税込)、ドコモSMTBネット銀行は固定金利特約期間中のみ33,000円(税込)です。
Q. 期間短縮型と返済額軽減型、どちらが得ですか?
A. 支払う利息の総額を減らす効果は、一般に期間短縮型のほうが大きくなります。毎月の負担を軽くしたい場合は返済額軽減型が向きます。「利息を減らしたいか/毎月を楽にしたいか」で選び分けてください。
Q. どの銀行でも両方の返済方式を選べますか?
A. 選べない銀行もあります。SBI新生銀行は公式サイトで期間短縮型のみの取り扱いと明記しています。返済方式は借入後に変えられない前提で、申込前に確認しておくのが安全です。
Q. 少額でも繰上返済する意味はありますか?
A. 手数料が無料で少額から返済できる銀行なら、少額でも元金が着実に減り、利息軽減の効果が積み上がります。特に借入初期は効果が大きいため、無理のない範囲でこまめに返すのも有効です。
Q. 繰上返済は住宅ローン控除に影響しますか?
A. 期間短縮型で償還期間が通算10年未満になると、その年以降は控除の対象外になる場合があります。控除を受けている期間は、返済期間を10年未満にしないよう注意が必要です。
Q. 繰上返済と借り換え、先にどちらを検討すべきですか?
A. 金利差が大きいなら借り換えのほうが効果が大きくなりやすく、金利差が小さい・残年数が短い場合は諸費用が重く、繰上返済が有利になりやすい傾向です。借り換えを考えるなら、今の銀行の全額繰上返済手数料も費用に含めて試算してください。
手数料や最低金額、全額繰上返済の扱い、選べる返済方式は銀行ごとに差があります。これから住宅ローンを選ぶなら、金利だけでなく「繰上返済のしやすさ(手数料・最低金額・返済方式・ネット完結の可否)」も比較のポイントに加えると、返し始めてからの自由度が変わってきます。手数料・条件は改定されることがあるため、申込前には各金融機関の公式サイトで最新の内容をご確認ください。
<当サイトおすすめの住宅ローン公式サイト>
