自然災害で住宅ローンなどの弁済が困難になった場合、被災者が債務整理をしやすくなる制度である「二重ローン救済策」が、この4月に起こった熊本地震から適用されます。
信用情報は毀損されず、債務整理終了後も新たに住宅ローンを借りることが可能だということ。
具体的にはどのようなことなのでしょうか? 自然災害で被災し、それまでの仕事の継続が困難になったり、自宅が被災し家を別に借りることになったりした場合、金融機関に支払い猶予や返済条件の変更を相談して弁済継続の可能性を探ります。
さらに、被災者生活再建支援金や災害弔慰金・障害見舞金、地震保険の保険金や新規住宅ローンなどを利用して生活再建基盤となる住宅が取得できるかどうかを検討します。
それが困難な場合は、既存債務をいったん整理する手続き(免除する手続き)を取らねばなりません。
そのためには、法律的に、自己破産や会社倒産などの法的整理と、民事調停などの私的整理がありますが、個人や個人事業主でも民事調停を利用しやすくするために制定されたのが「特定調停法」です。
しかし、本法律による手続きはそのケースにより異なり、非常に複雑なため、「自然災害による被災者のためのガイドライン」が組まれました。 本ガイドラインは、過去の1300件以上の債務整理の実績を踏まえ、甚大な自然災害の被害者を対象に定められています。手続き支援を行う弁護士費用を国が負担し、原則的には半年以内で債務整理を完了できるようになっています。
しかし、かといって、すべての人が「二重ローン救済策」により既存の債務を免除されるわけではありません。破産手続きにおける支払不能または、そのおそれのある場合に限定されています。
つまり、十分な資力のある被災者には適用されません。まずは、債務額が一番多い金融機関または、フラット35の利用者は住宅金融支援機構(メインとなる債権者)へ問い合わせ、自分が「支払不能」状態かどうかを判断するのが良いでしょう。 最後に「二重ローン救済策」を利用する場合の流れをざっと説明しましょう。
まず最初に、主な債権者へ手続き着手の申し出を行います。手続き着手同意書が得られれば、登録支援専門家による手続き支援を依頼します。
その後、債務者に手続支援専門家から委嘱の通知があります。それを持って、必要書類を作成し、全債権者に債務整理(開始)の申出を行います。全債権者から同意が得られる弁済案が作成できれば、全債権者へ調停事項案を提出、説明が必要です。
その後、全債権者から同意の回答を得たら、必要書類をそろえて簡易裁判所に特定調停を申し立てます。不合意の債権者があっても、その債券額が少なければ、その債権者を除く調停事項案で特定調停に持ち込める場合もありますが、原則全債権者合意が必要と考えて良いでしょう。