
夫婦共働き世帯が増え、都市部を中心に不動産価格が上昇している近年、住宅ローンを2人で協力して借りるペアローンを選ぶ人が増えています。ここでは、ペアローンの弱点である「団信の保障が自分の契約分にしか及ばない」という問題と、それを補う【フラット35】のデュエット(ペア連生団信)を、2026年8月時点の公式情報にもとづいて整理します。
ペアローンとは?
ペアローンとは1つのマイホームを夫婦別々の住宅ローンで借りて購入する方法です。例えば、4,000万円の住宅ローンの借り入れを行う時に2,000万円は夫名義で、残りの2,000万円を妻名義というようなイメージです。

利用者が増えていることもあり、メガバンクや人気のネット銀行の住宅ローンの多くはペアローンを取り扱っています。ペアローンを利用することで借りられる金額(≒買えるマイホームの価格)が増えるだけでなく、ペアローンには住宅ローン控除を2人分受けられるというメリットもあります。
1人の収入では審査が通らないケースでも、ペアローンに分割することで審査が通る可能性もあります。このように、いくつかのメリットがある一方で、事務手数料や登記費用などが通常よりも多く(単純計算で2倍)必要になるというデメリットや、夫婦どちらかに万が一の事態が起きた場合に住宅ローンの残高が残ってしまうという団信関連の注意点もあります。
このようなメリット・デメリットを確認したうえで利用を検討すると良いでしょう。このページではペアローンの注意点をおさらいしながら、その1つを解消する【フラット35】のデュエット(ペア連生団信)を解説します。ペアローンそのものの詳細については 住宅ローン ペアローンのメリット・デメリットとは?も合わせて参考にしてください。
ペアローンの注意点
団信の保障はそれぞれの契約分のみ
団信(団体信用生命保険)は、住宅ローン契約者が亡くなったり所定の状態になった場合に、保険金で住宅ローン残高がゼロになる仕組みですが、ペアローンを利用するときには注意しておきたいことがあります。
それは、住宅ローンの借り入れを2つに分割し、それぞれ別の契約になっているため、保険金は支払条件を満たした側が契約している住宅ローン残高だけを0円にし、もう一方の契約の残高は残るという点です。
「団信の意味がない」とまでは言いませんが、例えば小さな子どもを夫婦共働きで育てているケースを想像してみてください。夫婦のどちらかを失った場合、残された人は今までどおり働けるでしょうか。可能性が無いとは言いませんが、これまでの収入や働き方を維持するのはかなり難しいはずです。
そんな状況で住宅ローンの残高が残っていると重荷になり、最悪の場合はマイホームを手放すことにもなりかねません。これはペアローン利用時の注意点として認識しておきましょう。そして、この問題に対する答えの1つが【フラット35】のデュエット(ペア連生団信)です。
離婚時のペアローンの扱い
デュエットの話に移る前に、ペアローンを利用するなら念のため頭に入れておいてほしいことがあります。
本来はマイホームを買う時に考えることではありませんが、離婚する際にペアローンを組んでいるとかなり面倒になるという点です。マイホームをどうするかを協議するだけでなく、それぞれが契約している住宅ローンの支払いや処理方法、さらにそれらを加味した財産分与についても協議が必要となり、ただでさえ煩雑な離婚協議の調整事項が増えてしまいます。
もっとも面倒なのは、離婚時にマイホームを売却しても住宅ローンを完済できず残債が残るケースです。住宅ローン残高が売却金額よりも多いと「借金」が残ることになりますので、その処理は想像以上に手間がかかると念頭に置いておきましょう。
諸費用が2本分かかる
ペアローンは契約が2本になるため、事務手数料・印紙代(電子契約手数料)・登記費用などが原則としてそれぞれに発生します。事務手数料が「借入金額×2.20%(税込)」の定率型であれば合計額は1本で借りる場合と大きく変わりませんが、定額型の銀行では2本分がそのままかかります。金利だけでなく、この初期費用の増加分も含めて総額で比較してください。
【フラット35】でもペアローンは利用できます
ここは誤解されやすい点なので、はっきり書いておきます。【フラット35】はペアローンに対応しています。住宅金融支援機構の商品ラインナップにペアローンが用意されており、1つの物件に対して夫婦・親子・パートナーなどが借入申込みを行い、2つの【フラット35】を併せて利用できます。
機構が挙げるペアローンの特長は次の2点です。
- 借入期間をそれぞれ別に設定できる(年齢やライフプランに合わせて、一方は35年・もう一方は20年、といった組み方が可能)
- それぞれの申込本人が団体信用生命保険の契約者になるため、2人がそれぞれに合ったプランを選べる
そのうえで、【フラット35】には2人の収入を活かす方法が3通りあります。どれを選ぶかで団信の効き方がまったく変わるので、まず全体像を押さえましょう。
| 借り方 | 契約の本数 | 団信はどうなるか |
|---|---|---|
| ペアローン | 2本(2人がそれぞれ契約) | それぞれが団信の契約者。一方に万一のことがあっても、もう一方の残高は残る |
| 連帯債務+デュエット | 1本(2人が連帯債務者) | どちらかに万一のことがあれば、持分・返済割合にかかわらず債務の返済が不要になる |
| 収入合算(連帯債務で片方のみ加入) | 1本 | 加入した1人だけが保障の対象。合算した側に万一のことがあっても残高は0円にならない |

デュエット(ペア連生団信)について
【フラット35】で2人の収入を使って借りる場合、多くは連帯債務という形をとります。このとき、普通に申し込むと団信に加入するのは1人だけです。つまり、収入を合算した側に万一のことがあると、世帯の収入は減るのに住宅ローンの残高は1円も減らない、という状態になりかねません。
そこで用意されているのが「デュエット(ペア連生団信)」です。連帯債務者であるご夫婦2人で加入でき、どちらかに万一のことがあった場合、住宅の持分や返済割合にかかわらず、以後の【フラット35】の債務の返済が不要になります(住宅金融支援機構)。
ここは押さえておきたい4つのポイント
| 確認する項目 | 2026年8月時点の内容 |
|---|---|
| 費用のかかり方 | 掲載金利+年0.18%。2017年10月1日以後の申込みは団信の費用が金利に含まれる方式に変わっており、年払いの特約料は不要です |
| 対象となる「夫婦」の範囲 | 戸籍上の夫婦のほか、婚約関係にある方、内縁関係にある方、同性パートナーの関係にある方を含みます |
| 加入できる年齢 | 申込書兼告知書の記入・入力日現在で満15歳以上満70歳未満(デュエットは2人ともこの条件を満たす必要があります)。保障は満80歳の誕生日の属する月の末日まで |
| 保険金が支払われる場合 | 死亡したとき、または身体障害者福祉法に定める障害の級別が1級・2級に該当し身体障害者手帳の交付を受けたとき。新機構団信には「高度障害保険金」の取扱いはありません |
注意したいのは、保険金が支払われる条件です。民間の団信でよく見る「死亡または所定の高度障害状態」とは基準が異なり、新機構団信では身体障害者手帳(1級・2級)の交付を受けたかどうかで判断されます。ここを勘違いしたまま契約すると、いざというときに想定と違う結果になりかねません。
また、新3大疾病付機構団信ではデュエットを利用できません(新3大疾病付は掲載金利+年0.24%)。3大疾病の保障と夫婦2人分の保障は、【フラット35】では両立しない設計になっている点に注意してください。
「+年0.18%」は総額でいくらになるのか
2026年8月の【フラット35】の借入金利(返済期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付き)は、もっとも多い金利で年3.290%です(住宅金融支援機構・2026年8月分)。ここにデュエットの+年0.18%を乗せると年3.470%になります。

| 加入する団信 | 適用金利 | 毎月の返済額 | 35年間の総返済額 |
|---|---|---|---|
| 新機構団信(1人) | 年3.290% | 約160,000円 | 約6,740万円 |
| デュエット(2人) | 年3.470% | 約165,000円 | 約6,914万円 |
| 新3大疾病付機構団信(1人・デュエット不可) | 年3.530% | 約166,000円 | 約6,973万円 |
※当社試算。借入4,000万円・返済期間35年・元利均等返済・ボーナス返済なしで計算した概算です。デュエットの追加負担は毎月約4,100円、35年間で約174万円という計算になります。実際の適用金利は取扱金融機関ごとに異なり、借入日の金利が適用されます。必ず各金融機関の公式サイトでご確認ください。
2人分の生命保険を別途契約する場合の保険料と比べてどうか、という視点で判断するとよいでしょう。年齢が上がるほど生命保険料は高くなる一方、デュエットの上乗せ幅は年齢にかかわらず一定という点は、比較の材料になります。
デュエット(ペア連生団信)を取り扱う金融機関は?
【フラット35】の取扱金融機関であれば、基本的にデュエット(ペア連生団信)も受け付けていると考えて問題ありません。ただし、【フラット35】の借入金利は取扱金融機関ごとに異なるため、金利・事務手数料・相談体制を合わせて比べる必要があります。
収入合算や連帯債務、デュエットの利用は、書類も判断も1人で借りる場合より複雑になります。「ネットで申し込んですんなり契約」とはいきにくいので、対面で相談できる窓口があると進めやすいでしょう。その点で候補になるのがSBIアルヒです。【フラット35】の実行件数シェアは27.7%で16年連続No.1、店舗は約90拠点(2026年3月末現在)あり、相談しながら契約内容を固めていくことができます。
※2010年度-2025年度統計、取り扱い全金融機関のうち借り換えを含む【フラット35】実行件数(2026年3月末現在、SBIアルヒ調べ)
なお、変動金利で2人分の保障を確保したい場合は、ペアローン専用の連生団信を用意している銀行を検討する方法もあります。りそな銀行のペア団信のほか、SBI新生銀行のように全疾病保障付団信を上乗せ0円で付けられる住宅ローンを、ペアローンの2本それぞれに使うという考え方もあります。金利タイプと保障の組み合わせは各行で異なるため、公式サイトで条件を確認してください。
よくある質問
Q. ペアローンと連帯債務は、どちらが得ですか?
A. 「得」の中身によります。住宅ローン控除を2人分使いたい・借入期間を別々にしたいならペアローン、どちらかに万一のことがあったときに債務全体をなくしたいなら連帯債務+デュエットが向きます。諸費用はペアローンのほうが増えやすい点も判断材料です。
Q. 同性パートナーでもデュエットに加入できますか?
A. 住宅金融支援機構は、デュエットを利用できる「ご夫婦」に戸籍上の夫婦のほか、婚約関係・内縁関係・同性パートナーの関係にある方を含むと明記しています。必要書類は取扱金融機関にご確認ください。
Q. 団信に加入しないという選択はできますか?
A. 健康上の理由その他の事情で新機構団信に加入しない場合でも【フラット35】は利用できます。ただしその場合、万一のときに残高は残ります。加入しない場合の適用金利は掲載金利と異なりますので、機構および取扱金融機関でご確認ください。
Q. 後からデュエットに変更できますか?
A. 団信は申込時に選ぶもので、契約後の変更は原則できません。2人で借りるかどうかを決める段階で、団信の形も同時に決めると考えてください。
まとめ
ペアローンは借入額を増やし住宅ローン控除を2人分使える一方、団信の保障が自分の契約分にしか及ばないという構造的な弱点があります。【フラット35】はペアローンにも連帯債務にも対応しており、連帯債務であればデュエット(掲載金利+年0.18%)で2人分の保障を確保できます。
ただし、新機構団信は高度障害保険金の取扱いがなく、新3大疾病付ではデュエットを使えないなど、民間の団信とは設計が違います。金利差だけでなく「誰が・どの状態になったときに・いくら保障されるのか」を確認してから借り方を決めてください。

