
「がん」「心疾患(心臓病)」「脳卒中(脳血管疾患)」――いわゆる3大疾病で亡くなる人の割合は、長期的に見れば大きく下がってきました。厚生労働省の人口動態統計では脳血管疾患の年齢調整死亡率は昭和45年をピークに低下が続いています。一方でがんと診断される人は減っておらず、2023年に新たにがんと診断されたのは99万3,469例(国立がん研究センター)。つまり住宅ローンの保障で問われているのは「亡くなったとき」より、「治療しながら返済を続けられるか」という点に移っています。統計から読み取れる変化と、団信でどこまで備えられるのかを中立に整理します。
死亡率は下がったが、がんにかかる人は減っていない
厚生労働省の「人口動態統計」で、高齢化の影響を取り除いた「年齢調整死亡率(人口10万対)」の長期推移を見ると、昭和60年(1985年)と平成27年(2015年)の比較では次のように低下しました。
- 心疾患:146.9 → 65.4(およそ半分以下に)
- 脳血管疾患(脳卒中):134.0 → 37.8(およそ4分の1程度に)
※この2つの数値は昭和60年モデル人口を基準にした年齢調整死亡率です。基準人口は2020年から平成27年モデル人口に切り替わっているため、新しい統計と単純に並べて比べることはできません。基準の異なる数値を混ぜないことが、この種のデータを読むときの最初のポイントです。
直近の状況も傾向は同じです。令和6年(2024年)人口動態統計(確定数)の概況によれば、脳血管疾患は昭和45年をピークに低下傾向が続いており、死因の順位も悪性新生物(がん)が1位、心疾患が2位となっています。
ところが「かかる人」の側は別の動きをしています。国立がん研究センターの最新がん統計によると、2023年に新たにがんと診断されたのは993,469例(男性556,059例、女性437,406例)。生涯でがんと診断される確率は男性61.1%・女性50.1%で、男女とも「2人に1人」という水準です。がんの罹患は2010年代後半ごろまで増加し、その後は横ばいで推移しています。
一方で治療の成績は上がっており、2018年にがんと診断された人の5年相対生存率は男女計64.8%。「亡くなる人は減っているが、かかる人は減っていない。そして治療は長く続く」――これが3大疾病を取り巻く大きな流れです。
備えの軸は「死亡」から「発症後の返済」へ移っている
この流れをふまえると、住宅ローンの保障も「万が一の死亡に備える」だけでは足りません。発症しても返済を続けられる状態をつくれるかが実際の論点になります。住宅ローンは数十年つき合う借り入れで、返済期間中に3大疾病にかかる可能性は決して低くないためです。収入がどう変わるかについては、がん治療前に約4割が退職しているという調査もあわせて確認しておくと、必要な保障の量を考えやすくなります。
近年は、こうしたニーズに応えて疾病保障(とくにがん保障)を厚くする銀行が増えています。代表例が、がんと診断確定されるだけで住宅ローン残高が減額・免除される「がん保障団信」です。がん以外の保障も含めた全体像は、がん・3大疾病・特定状態保障の違いで整理しています。
上乗せ金利ゼロでどこまで保障されるか(3行の実例)
一般的な疾病保障は「就業不能が一定期間続くこと」などが支払い条件で、給付を受けるまでのハードルが高いことがあります。これに対し「がんと診断確定されるだけで保障される」タイプは、治療の初期段階から返済不安を軽くできる点が特長です。以下は各行公式サイトで2026年9月10日に確認した内容です。
auじぶん銀行は、「がん50%保障団信」を上乗せ金利なしで付帯できます。がん診断で住宅ローン残高の50%を保障するほか、急性心筋梗塞・脳卒中・肝疾患・腎疾患の4疾病でも所定の状態に該当すれば残高の50%を保障。すべての病気やケガ(精神障害を除く)で入院が続き通算180日以上になった場合は残高100%を保障します。より手厚くしたい場合は「がん100%保障団信」が上乗せ年0.05%、「がん100%保障団信プレミアム」が上乗せ年0.15%です(いずれも50歳以下向けプランの内容。auじぶん銀行 団体信用生命保険)。
ソニー銀行は、がん診断確定時に残高の50%を保障する「がん団信50」を上乗せ金利なしで付帯。年0.1%の上乗せで「がん団信100」に切り替えると、残高100%保障に加えてがん診断給付金100万円、がん先進医療給付(通算2,000万円)、上皮内がん・皮膚がん給付金50万円などが付きます。保障特約付き団信の加入時年齢は満50歳未満です。
諸費用と団信の分かりやすさで選ぶなら、SBI新生銀行も検討に値する選択肢です。保証料0円・一部繰上返済手数料0円で、団信は一般団信と「全疾病保障付団信」が上乗せ金利なし。全疾病保障付団信は、がん・急性心筋梗塞・脳卒中・高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎などで所定の就業不能状態が続いた場合に残高100%を保障し、就業不能期間中の毎月の返済額も保障します。がん診断確定で残高が0円になる「ガン団信」は年0.1%の上乗せです(SBI新生銀行 団体信用生命保険)。店舗相談とオンライン手続きの両方に対応している点も、初めての住宅ローンでは安心材料になります。
主要3行のがん保障団信を比較
| 銀行 | 上乗せ金利なしで付く保障 | 上乗せありのプラン |
|---|---|---|
| auじぶん銀行 | がん50%保障団信(がん診断で残高50%/4疾病50%/全疾病長期入院で100%) | がん100%保障団信=年0.05%、がん100%保障団信プレミアム=年0.15% |
| ソニー銀行 | がん団信50(がん診断で残高50%) | がん団信100=年0.1%(残高100%+診断給付金100万円ほか) |
| SBI新生銀行 | 一般団信/全疾病保障付団信(所定の就業不能で残高100%+毎月の返済額を保障) | ガン団信=年0.1%(がん診断確定で残高0円) |
※上表は2026年9月10日に各行公式サイトで確認した内容です。保障内容・上乗せ金利・加入条件は改定されることがあるため、申し込み前に必ず各金融機関の公式サイトと「被保険者のしおり」等でご確認ください。
各行の疾病保障をより広い範囲で見比べたい場合は、住宅ローンの疾病保障の比較ページもあわせてご覧ください。
申し込み前に必ず見ておきたい3つの条件
上乗せ金利の数字だけを並べても、実際に給付されるかどうかは決まりません。次の3点は各行に共通する落とし穴なので、金利と同じ重さで確認してください。
- 免責期間(90日):責任開始日からその日を含めて90日以内にがんと診断確定された場合は、auじぶん銀行・ソニー銀行・SBI新生銀行のいずれも保障の対象外です。
- 対象外となるがん:上皮内がん(子宮頸がん0期・大腸粘膜内がんなど)や、皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がんは保障の対象になりません。
- 加入年齢:疾病保障付きのプランは加入時年齢の上限が低めです。SBI新生銀行の全疾病保障付団信・ガン団信は20〜49歳(一般団信は20〜65歳)、ソニー銀行の保障特約付き団信は満50歳未満が条件です。
よくある質問(がん保障団信)
Q. がん保障団信は「診断されるだけ」で本当に保障されますか?
A. 所定のがんと診断確定された時点で保障されるのが基本です。ただし責任開始日から90日以内の診断は対象外で、上皮内がんや一部の皮膚がんも対象外です。加入前に各行の保障範囲を確認しましょう。
Q. 残高50%保障と100%保障、どちらを選べばよいですか?
A. 50%保障は上乗せなしで付く銀行が多く、コストを抑えたい人に向きます。100%保障は上乗せ(auじぶん銀行 年0.05%、ソニー銀行・SBI新生銀行 年0.1%)が必要ですが、診断確定で残高がゼロになります。上乗せ分の総返済額と得られる保障のバランスで判断してください。
Q. 上乗せ年0.1%は、返済額にどのくらい響きますか?
A. ソニー銀行の公式試算では、借入5,000万円・35年・ボーナス返済なし、金利年1.000%を年1.100%にした場合で月々の返済額の差は2,343円です。借入額と期間で変わるため、各行のシミュレーションで自分の条件に当てはめて確認するのが確実です。
Q. すでに医療保険・がん保険に入っています。団信と重複しませんか?
A. 役割が違います。医療保険・がん保険は治療費や入院費をまかなうもので、団信は住宅ローン残高そのものを保障するものです。重なる部分があるなら、借り換えや新規借り入れのタイミングで既存の保険を見直し、保険料の無駄を減らせる可能性があります。
Q. 団信のプランは、借り入れ後に変更できますか?
A. 原則として借り入れ後の変更はできず、申し込み時に1つを選ぶ形が一般的です。SBI新生銀行も3つの保障プランから1つのみ選択でき、重複して申し込むことはできません。健康状態は年齢とともに変わるため、加入できるうちに選ぶという視点も必要です。
団信・疾病保障の内容は、金利や諸費用と並ぶ住宅ローン選びの比較材料です。上乗せ金利は総返済額に直結する一方、免責期間や対象外のがんといった条件は給付の可否そのものを左右します。金利・諸費用・保障の3つを横並びで見比べることが、後悔の少ない選び方につながります。
参考・出典
- 厚生労働省 令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況
- 国立がん研究センター がん統計「最新がん統計」
- auじぶん銀行 団体信用生命保険
- ソニー銀行 団体信用生命保険(団信)
- SBI新生銀行 団体信用生命保険
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