
がん治療のために退職・廃業した人のうち約6割(58.3%)は、治療が始まる前に職を離れています(国立がん研究センター「令和5年度患者体験調査」)。収入が細るタイミングは想像よりも早く、「働けなくなってから」を条件にした保障では間に合わないことがあるということです。住宅ローンで備えるなら、金利や諸費用よりも先に団信の保険金が支払われる条件を確かめておきたいところです。
がんで退職した人の約6割は治療開始前に離職している
国立がん研究センターが2025年7月に公表した令和5年度患者体験調査(3回目)は、2021年にがんと診断された18歳以上の患者1万1,169人分の回答を集計したものです。就労に関する結果は次のとおりでした。
- がん診断時に収入のある仕事をしていた人:44.1%
- そのうち、がん治療のために休職・休業した人:53.4%
- そのうち、がん治療のために退職・廃業した人:19.4%
- 退職・廃業した人のうち、治療開始前に辞めた人:58.3%
つまり、仕事を辞めた人の6割近くが、治療の見通しが立つ前に離職を決めていることになります。診断直後は情報も気持ちも整理がつかず、「職場に迷惑をかけられない」「両立できる自信がない」と早い段階で判断してしまいやすい、という構図です。
一方で、両立支援の環境は少しずつ整ってきています。同じ調査では、職場から勤務上の配慮があったと答えた人が74.5%、治療と仕事の両立のために社内制度を利用した人が70.6%でした。ただし医療を受けるための金銭的な負担が原因で生活に影響があったと答えた人も24.2%おり、短時間勤務などで働き続けられても収入の減少そのものは避けにくいのが実情です。だからこそ、住宅ローンの側でも「もしもの時のリスク」を減らしておく価値があります。
カギは「保険金が支払われる条件」
がんに備える住宅ローンを選ぶうえで最も重要なのが、どんな条件で保障(保険金)が受けられるかです。大きく2つのタイプがあります。
| 保障のタイプ | 保険金の支払い条件 | 読者にとっての意味 |
|---|---|---|
| がん診断確定型 | 所定のがんと診断確定されること | 手術後に職場復帰できても保障が受けられる |
| 就業不能型 | 就業不能な状態が一定期間(例:12か月)続くこと | 1年以内に復職すると対象外になることがある |
auじぶん銀行の「がん50%保障団信」やソニー銀行の「がん団信50・100」は、いずれも「がんと診断確定された場合」が条件です。診断され、手術後に職場復帰できるケースでも、住宅ローン残高がゼロまたは半分になります。一方、多くの金融機関は「就業不能が12か月以上続くこと」を条件としており、早期に復職すると保障されない場合があります。先ほどのデータのとおり、離職は治療開始前に起きやすいため、この条件の違いは無視できません。上乗せ0円で付く団信の横並び比較は疾病保障付き住宅ローンの4行比較で整理しています。
診断確定型の代表例と上乗せ金利の比較
診断確定型を上乗せ0円から選べる代表例が、auじぶん銀行とソニー銀行です。2026年9月11日に各行公式で確認した内容は次のとおりでした。
| 金融機関・団信プラン | 上乗せ金利(年) | がんと診断確定されたとき |
|---|---|---|
| auじぶん銀行 がん50%保障団信 | なし(0%) | 残高の50%を保障。4疾病保障・全疾病長期入院保障・月次返済保障も付帯 |
| auじぶん銀行 がん100%保障団信 | 0.050% | 残高の100%を保障 |
| ソニー銀行 がん団信50 | なし(0%) | 残高の50%を保障 |
| ソニー銀行 がん団信100 | 0.100% | 残高の100%を保障+がん診断給付金100万円 |
auじぶん銀行の「がん50%保障団信」は、がん診断確定で残高が半分になるうえ、急性心筋梗塞・脳卒中・肝疾患・腎疾患の4疾病保障、全疾病長期入院保障、月次返済保障までが上乗せ金利なしで付きます(単独加入・50歳以下の場合。ペアローン連生団信を選ぶ場合は年0.30%の上乗せ)。残高が0円になる「がん100%保障団信」は年0.050%、給付金が手厚い「がん100%保障団信プレミアム」は年0.150%の上乗せです。
ソニー銀行も、上乗せなしの「がん団信50」(残高50%保障)と、年0.100%の上乗せで残高100%+がん診断給付金100万円が付く「がん団信100」を用意しています。がん団信100はさらに、がん先進医療給付(通算2,000万円・一時金30万円)、上皮内がん・皮膚がん給付金50万円も付き、民間のがん保険に近い手厚さです。ただし、がん保障の付いた特約付き団信は加入時年齢が満50歳未満に限られます(一般団信・ワイド団信は満65歳未満)。
諸費用の分かりやすさを重視するならSBI新生銀行も選択肢です。保証料0円・一部繰上返済手数料0円(1円から何度でも)で、一般団信(上乗せ0円)に加え、がん団信や全疾病保障付団信(2026年3月開始・上乗せ0円)を取りそろえています。※保障内容・上乗せ金利・加入条件は改定されることがあります。最新の適用条件は各金融機関の公式サイトでご確認ください。
よくある質問(がんと仕事・収入減への備え)
Q. がんになっても働けた場合、保障は受けられないのですか?
A. 「がん診断確定型」の団信であれば、診断が確定した時点で保障が受けられるため、その後に職場復帰できても住宅ローン残高が減額・免除されます。一方「就業不能型」は一定期間働けない状態が条件のため、早期に復職すると対象外になることがあります。加入前に支払い条件を必ず確認しましょう。
Q. 50歳を過ぎるとがん保障付きの団信には入れませんか?
A. 銀行によって線引きが違います。ソニー銀行の保障特約付き団信は加入時年齢が満50歳未満、auじぶん銀行は50歳以下が特約付き団信の対象で、51歳以上は一般団信・ワイド団信が中心になります。50歳前後で借り換えを考えている場合は、年齢条件が保障の選択肢を左右する点に注意してください。
Q. 収入が減ったとき、住宅ローンの負担を抑える方法はありますか?
A. 返済が苦しくなる前に、借入先の金融機関へ早めに相談することが基本です。返済期間の延長や一時的な返済額の減額に応じてもらえる場合があります。加えて、がん保障団信などで残高が減る保障が付いていれば、収入減の影響を和らげられます。借り換えで金利と保障をまとめて見直すのも一つの方法です。
Q. すでにがん保険に入っていても、がん保障団信は必要ですか?
A. がん保険は「手元に給付金が入る」、がん保障団信は「住宅ローン残高が減る・なくなる」と役割が異なります。両方あると安心度は高まりますが、保障が重複して保険料に無駄が出ることもあります。住宅ローンにがん保障を付けるタイミングで、既加入の保険を見直すとよいでしょう。
国民病とも言われるがんへの備えは、住宅ローンの新規借り入れ・借り換えを考えるときの大切な比較材料です。金利や諸費用だけでなく、保障の支払い条件と加入時年齢まで含めて各社を横並びで確認してみてください。統計から「もしも」の確率を確かめたい場合はがん保障付き住宅ローンの比較もあわせてどうぞ。
