
住宅ローンのなかでも、当初の毎月返済額が最も少なくなりやすいことから根強い人気があるのが変動金利タイプです。ただし変動金利は名前のとおり、原則として半年ごとに金利が見直される仕組みで、金利が上昇すれば将来の返済額が増える可能性があります。
変動金利は銀行ごとに仕組みが細かく異なりますが、その違いを十分に理解しないまま選んでいる人が少なくありません。これから住宅ローンの新規借入や借り換えを検討していて、変動金利タイプを候補に入れている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事では、変動金利の仕組み・基礎知識と、金利上昇局面でこそ押さえておきたい注意点を、中立の立場でわかりやすく整理します。
そもそも変動金利とは?
変動金利は、多くの場合「短期プライムレート」(短プラ)を基準に決められます。短プラは、銀行が信用力の高い企業へ短期で貸し出す際の最優遇金利で、日銀の政策金利の影響を受けて動きます。銀行はこの短プラに一定幅を上乗せした「基準金利」を定め、そこから優遇幅(引き下げ幅)を差し引いて実際の適用金利を決めています。
短プラは2009年から2024年8月ごろまで年1.475%で据え置かれ、日銀のマイナス金利政策の下でも動きませんでした。しかし、日銀が段階的な利上げに転じたことを受けて、2024年9月以降は主要行の短プラが上昇に転じています。三菱UFJ銀行・みずほ銀行などは2026年8月3日に短プラを年2.375%へ引き上げることを公表しており、変動金利の基準金利も順次見直される見通しです(2026年7月時点。最新の短プラ・適用金利は各金融機関の公式サイトでご確認ください)。
変動金利は原則半年ごとに金利が見直される仕組みで、低金利が続けば最もコストを抑えて利用できますが、短プラが上がればいずれ変動金利も上がるという性質は変わりません。日銀は2026年6月に政策金利を1.0%程度へ引き上げており、かつての「金利が動かない前提」ではなくなってきた点は、変動金利を選ぶうえで意識しておきたいところです。
変動金利のデメリット・5年ルールとは?
SBI新生銀行やソニー銀行などの一部の銀行を除いて、変動金利の住宅ローンには一般的に「5年ルール」という仕組みが導入されています。金利は半年に一度見直されますが、金利が変わっても5年間は毎月返済額を変更しない、というものです。SBI新生銀行やソニー銀行は変動金利で人気の高い選択肢ですが、この点でメガバンクや地方銀行の変動金利と違いがあることは意外と知られていません。
この5年ルールは「金利は見直すのに返済額は変わらない」という一見わかりにくい仕組みですが、目的は「金利が急上昇したときに毎月返済額まで急に増えて家計が困らないよう、5年間は返済額を固定する」という負担緩和にあります。
ただし、返済額が変わっていないだけで、5年後の再計算時に、そのときの残り期間・元本・金利であらためて毎月返済額が計算し直されます。金利が上がった局面では、5年ルールによって元本の返済が予定より遅れているため、返済が自動的に後ろ倒しになっている点に注意が必要です。急に支払額が上がるのを防いでいるだけで、5年ルールで得をするわけではないということです。
一般に推奨される繰り上げ返済も、この局面では少し注意が要ります。繰り上げ返済をすると、その時点の状態で返済計画が再計算されるため、最大5年間あった返済額据え置きの猶予がなくなり、繰り上げ返済した時点で再計算が行われます。すると半年ごとに見直された金利で計算され、月々の返済額が増える可能性があります。金利上昇局面で家計負担が予想外に膨らむのを避けたい場合は、5年に一度の返済額見直しのタイミングに合わせて一部繰り上げ返済を行うのも一つの方法です。
なお、SBI新生銀行やソニー銀行の変動金利タイプは前述のとおり5年ルールを採用していないため、半年ごとの見直しで金利が上がれば、その分だけ毎月の返済額もすぐに増えます。当たり前のようでいて見落としやすい点なので、しっかり認識しておきましょう。
変動金利の125%ルールとは?
変動金利には125%ルールもあります。5年ルールと合わせて、毎月の返済額が急激に増えるのを防ぐ仕組みで、5年ごとに見直される返済額を、その前の返済額の1.25倍までに抑えるというものです。
金利上昇で本来増えるはずの返済額を意図的に抑える、契約者を守る仕組みに見えますが、5年ルールや125%ルールが働くほど金利が上昇すると、毎月の返済が利息の支払いに偏り、元本がなかなか減らないという状況が起こり得ます。増えるはずだった利息分が「未払利息」として残り、最終回にまとめて請求されるケースもあるため、仕組みに守られていても金利上昇そのものの負担が消えるわけではない点は頭に入れておきたいところです。
5年ルール・125%ルールの有無は銀行で違う
この2つのルールはすべての銀行に共通しているわけではありません。採用の有無で、金利が動いたときの返済額の変わり方が異なります。代表的なタイプを整理すると次のとおりです。
| タイプ | 5年ルール・125%ルール | 金利上昇時の返済額の動き |
|---|---|---|
| 多くのメガバンク・地方銀行など | あり | 金利が上がっても5年間は毎月返済額が据え置き。5年ごとに見直し(上限は従前の1.25倍) |
| SBI新生銀行・ソニー銀行など一部 | なし | 半年ごとの見直しで金利が上がると、その都度毎月返済額に反映される |
「5年ルールあり」は当面の返済額が安定する一方、元本の減りが遅れて未払利息が生じるリスクがあります。「5年ルールなし」は金利変動が早く返済額に反映されるぶん、元本の減りが遅れにくく、負担の実態が見えやすいという考え方もできます。どちらが良い・悪いではなく、金利が動いたときの返済額の変わり方が違うという理解が大切です。詳しい適用条件は各行の商品説明書・公式サイトでご確認ください。
変動金利のメリットとは?
変動金利の最大のメリットは、金利タイプのなかで当初の適用金利が最も低くなりやすい点です。同じ借入額でも、固定金利に比べて当初の毎月返済額・総返済額を抑えやすく、金利が大きく上がらなければトータルの負担を小さくできます。
一方で、2026年に入って日銀の利上げ・短プラ引き上げが進み、変動金利にも上昇圧力がかかり始めています。低さだけで選ぶのではなく、将来金利が上がった場合の返済額の増え方まで試算したうえで、固定金利や固定期間選択型と比較して選ぶことが大切です。下記は国内金融機関の変動金利ランキングです(適用金利は変動するため、最新の金利は各金融機関の公式サイトでご確認ください)。
変動金利比較表/
| 変動金利比較表 | |||
|---|---|---|---|
| No | 銀行名 | 変動金利 | 特徴 |
| 1 | SBI新生銀行 | 年0.990% | ハイパー預金金利優遇プログラム適用時 |
| 2 | PayPay銀行 | 年1.330%(全期間引下型) | 日本初のネット銀行(旧ジャパンネット銀行)。来店不要・ネット完結・電子契約で利便性も抜群。 ※借入総額が、物件購入価格および建築請負価格の合計額に対して90%以内のお客さまが対象です。 ※本優遇を受ける場合は、諸費用、事務手数料も自己負担となります。 |
| 3 | ソニー銀行 (変動セレクト住宅ローン) | 年1.347%![]() | オリコン顧客満足度上位常連。無料の疾病保障も魅力。 ※2023年11月1日からのお借り入れ分について、新規購入での物件の購入価格を超えてお借り入れの場合は、金利が年0.05%上乗せになります |
| 4 | イオン銀行 | 年1.040%※1 | イオングループでの買い物がいつでも5%オフ |
| ※この表の金利は定期的に更新されるため、記事本文と更新タイミングが異なる場合があります。 | |||
※1 物件価格の80%以内でお借入れの場合
よくある質問(変動金利の注意点)
Q. 5年ルール・125%ルールがあれば、金利が上がっても返済額は増えないのですか?
A. 5年間は毎月返済額が据え置かれますが、負担そのものが消えるわけではありません。据え置き中も金利は上がっているため元本の減りが遅れ、5年後の再計算で返済額が増えたり、未払利息が残ったりする可能性があります。
Q. すべての住宅ローンに5年ルールがあるのですか?
A. いいえ。SBI新生銀行やソニー銀行など一部の銀行は5年ルール・125%ルールを採用しておらず、金利の見直しがそのつど返済額に反映されます。契約前に各行の商品説明書で確認しましょう。
Q. 金利上昇局面では繰り上げ返済のタイミングに注意が必要ですか?
A. 5年ルールのある変動金利では、繰り上げ返済をすると返済額の再計算が前倒しで行われ、月々の返済額が増える場合があります。5年ごとの見直し時期に合わせて実行するなど、タイミングを意識すると負担増を抑えやすくなります。
Q. これから変動金利はどうなりますか?
A. 日銀は2026年6月に政策金利を1.0%程度へ引き上げ、三菱UFJ銀行・みずほ銀行などは2026年8月3日に短プラを2.375%へ引き上げると公表しています。変動金利の基準金利にも順次反映される見通しですが、反映時期や幅は銀行ごとに異なります(2026年7月時点)。最新の金利は各金融機関の公式サイトで必ずご確認ください。


