
近年、台風・豪雨・豪雪などの自然災害が相次ぎ、損害保険各社は住宅被害に対する保険金の支払いが増えています。これを受けて火災保険はこの10年で複数回にわたり値上げされ、直近では保険料の目安となる「参考純率」が全国平均で13.0%引き上げられました(損害保険料率算出機構が2023年6月21日に金融庁長官へ届出、同月28日に適合性審査結果を受領。各社はこれを踏まえて2024年10月以降の契約から保険料を改定しています)。あわせて、これまで全国一律だった水災(水害)の保険料率が、市区町村ごとのリスクに応じて5区分(1〜5等地)に細分化されました。
2026年9月時点でも、この2023年6月の届出が火災保険参考純率の最新の改定です(同機構が公表している改定一覧で確認。2026年に届出があったのは自動車保険と傷害保険の参考純率です)。ただし実際の保険料は「参考純率+各社が独自に決める付加保険料率」で決まるため、参考純率が動かない年でも、各社の判断で保険料が改定されることがあります。更新時期の保険料は、必ず契約中の保険会社・代理店の案内でご確認ください。
参考純率は使用義務のない参考数値で、そのまま値上げ率になるわけではありません。建物の所在地・構造・築年数などによって、個々の保険料は大きく異なります。
また、火災保険の最長契約期間は2022年10月から10年→5年に短縮されました。長期契約ほど1年あたりの保険料が割安になるため、契約期間の短縮は実質的な負担増ともいえます。地震保険も2017年・2019年・2021年の3段階で基準料率が改定されており、住まいの保険は全体として見直しが続いています。
この記事では、台風・竜巻・突風・水害への備えを、「どの損害が、どの保険でカバーされるのか」という切り口で整理します。本サイトでこうした情報をご紹介するのは、住宅ローンの比較だけでなく、マイホームに関連するより多くの情報をお届けしたいと考えているためです。ぜひ定期的に当サイトへお越しください。
そもそも損害保険・火災保険とは?
火災保険(住まいの保険)は、火災や風水害などの偶然の事故で生じた住宅・家財の損害を補償するものです。契約が成立したその日から、定められた補償が受けられます。
たとえば2,000万円の住宅が火災で全焼した場合、残骸の撤去や再建に多額の費用がかかります。火災保険に加入していなければ自分の貯蓄で備える必要がありますが、毎年保険料を払って加入していれば、もしもの災害にいつでも対応できるというメリットがあります。
火災保険の保険料率は、事故が起きたときの保険金に充てられる純保険料率と、保険会社の事業経費に充てられる付加保険料率に分かれます。参考純率が関係するのは前者だけ、という点を押さえておくと、報道される「◯%値上げ」と自分の保険料の動きが一致しない理由も理解しやすくなります。
台風・水害の損害は火災保険で補償される?
台風・竜巻・突風による損害は火災保険の「風災」、洪水や高潮などによる損害は「水災」の補償でカバーされるのが基本です。ただし補償される範囲は契約している商品・プランによって異なり、水災補償を外している契約もあります。「自然災害だから当然支払われる」とは限らない点に注意してください。
また、住まいまわりの被害でも、そもそも火災保険の対象外というものがあります。おもな例を整理すると次のとおりです。
| 被害の例 | 対応する保険 | 確認したいポイント |
|---|---|---|
| 台風・竜巻・突風で屋根が飛んだ、窓が割れた | 火災保険の風災補償 | 免責金額(自己負担額)の設定や、一定額以上の損害から支払う方式かどうか |
| 豪雨による洪水・高潮・土砂崩れで浸水した | 火災保険の水災補償 | そもそも水災補償を付けているか。付けていても浸水の深さなどの支払要件が定められている |
| 大雪でカーポートや屋根が壊れた | 火災保険の雪災補償 | 風災・雹災・雪災はひとまとまりで扱われることが多い |
| 冠水した道路で自動車が水没した | 自動車保険の車両保険 | 火災保険では補償されない。一般型とエコノミー型で扱いが異なる |
| 地震・噴火・津波で建物や家財が壊れた | 地震保険(火災保険に付帯) | 火災保険だけでは補償されない。地震が原因の火災も地震保険の領域 |
加入中の火災保険が台風・水害に対応しているかは、この機会に保険証券で確認しておきましょう。証券の内容が分かりにくい場合や紛失した場合でも、各保険会社のコールセンターに問い合わせれば補償範囲を教えてもらえます。
水災補償は「等地」とハザードマップの両方で考える
2024年10月以降の契約では、水災の保険料が水災等地(1〜5等地)によって変わります。自分の市区町村がどの等地かは、損害保険料率算出機構の「水災等地検索」で確認できます。
ここで注意したいのは、水災等地は市区町村単位の区分であり、同じ市区町村でも土地ごとの浸水リスクは異なることです。自分の住まいの実際のリスクは、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」で確認します。このとき、洪水(河川の氾濫)と内水(下水道などの排水能力を超えた雨による浸水)のマップは別物なので、両方を見ることが大切です。
水災リスクが低い地域では、水災補償を外して保険料を抑えるという選択もあります。ただし外せばその損害は補償されません。等地・ハザードマップ・保険料の3点を見比べ、判断に迷う場合は保険会社や代理店に相談してください。
おもな火災保険・共済の例
■東京海上日動「トータルアシスト住まいの保険」/「トータルアシスト超保険」
火災保険単体で契約する場合は「トータルアシスト住まいの保険」が該当します。「トータルアシスト超保険」は、住まい・自動車・ケガ・所得補償などをひとつの契約にまとめて設計する総合保険で、補償の重複やもれを一度に整理したい人に向く形です。
■損害保険ジャパン「THE すまいの保険」(個人用火災総合保険)
契約時に建物の評価額を決める方式で、万一の際の支払基準が明確になります。(※「損保ジャパン日本興亜」は2020年4月に「損害保険ジャパン」へ商号変更しています)
■こくみん共済 coop〈全労済〉「住まいる共済」(火災共済+自然災害共済)
自然災害共済は単独では加入できず、火災共済とセットで加入します。大型タイプと標準タイプがあり、風水害や地震などのリスクに備えられます。(※「全労済」は2019年に「こくみん共済 coop」へ愛称・ブランドを変更しています)
各社・各共済の補償内容・保険料・加入限度額は改定されることがあるため、最新の内容は必ず各社公式サイトでご確認ください。
地震による損害は地震保険の領域
地震・噴火・これらによる津波を原因とする損害は、火災保険では補償されません。備えるには火災保険に地震保険を付帯する必要があります(地震保険は単独では契約できません)。
損害保険料率算出機構によると、2025年度の地震保険付帯率(火災保険契約のうち地震保険を付けている割合)は70.8%で、前年度から0.4ポイント増、2003年度以降23年連続の上昇で過去最高となりました(2026年8月25日公表)。水災補償と同じく、「付けているつもりだったが付いていなかった」が起こりやすい領域なので、証券で確認しておきたいところです。
被害にあったときの進め方
被害にあったら、片づけや修理の前に、被害状況を写真・動画で記録したうえで保険会社・代理店に連絡します。証券が見当たらなくても、契約者名や住所から契約内容を照会できるのが一般的です。
また、災害の後には「保険金で自己負担なく直せる」といった住宅修理サービスの勧誘に関する相談も寄せられています。契約を急がず、まず自分の保険会社に補償の対象かどうかを確認するのが安全です。判断に困ったときは、消費者ホットライン「188」で身近な消費生活相談窓口を案内してもらえます。
よくある質問(火災保険と住宅ローン)
Q. 契約したあとに料率改定があると、保険料は途中で上がりますか?
A. 火災保険は契約期間中、契約時の保険料が満期まで適用されるのが原則です。料率改定の影響を受けるのは、改定日以降の新規契約と更新契約になります。長期契約の取り扱いは商品ごとに定めがあるため、詳細は約款や保険会社の案内でご確認ください。
Q. 水災補償を外すと、保険料はどのくらい下がりますか?
A. 下げ幅は建物の所在地(水災等地)・構造・保険金額によって大きく異なり、一律には言えません。水災補償あり・なしの両方で見積もりを取り、下がる金額と、外したときに自己負担となる損害の大きさを比べて判断してください。
Q. 住宅ローンを借りるとき、火災保険はどこで加入してもよいのですか?
A. 多くの金融機関は融資の条件として火災保険への加入を求めます。その際に提携商品を案内されることはありますが、加入先を自分で選べるのが一般的です。金融機関によっては保険金請求権への質権設定など個別の条件があるため、住宅ローンの比較と火災保険の比較は分けて進めつつ、条件は事前に金融機関へ確認しておくと安心です。
Q. 賃貸に住んでいる場合も火災保険は必要ですか?
A. 建物そのものは所有者(大家側)の火災保険の対象です。借りている人が加入するのは、自分の家財の補償と、失火などで部屋を損傷させた場合に備える借家人賠償責任などが中心になります。
損害が出たときは確定申告(雑損控除)も忘れずに
災害で住宅や家財に損害を受けた場合、保険による補償のほかに、確定申告で「雑損控除」を利用できる場合があります。控除額は、次の(1)(2)のうちいずれか多いほうです(国税庁 タックスアンサーNo.1110)。
(1) (損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
(2) (災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円
いずれの式にも「-保険金等の額」が入っている点がポイントです。受け取った保険金は損害額から差し引いて計算するため、保険で十分に補われた場合は雑損控除の対象額が残らないこともあります。
その年の所得金額から控除しきれなかった分は、翌年以後3年間(東日本大震災、または令和5年4月1日以後に発生する特定非常災害により生じた損失額については5年間)繰り越して控除できます。
なお、その年の所得金額の合計額が1,000万円以下の人が災害にあった場合は、雑損控除とは別に災害減免法による所得税の軽減免除があり、どちらか有利なほうを選べます。適用の条件は災害ごとに異なるため、必要書類とあわせて、確定申告の前に国税庁のページや所轄の税務署で確認しておきましょう。
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