自宅で安心して暮らすシニア夫婦のイメージ

自宅を手放さずに老後の資金を確保できる手段として広がってきたのがリバースモーゲージです。みずほ銀行がメガバンクとして初めて2013年7月に参入して以降、三菱UFJ銀行・三井住友銀行などのメガバンクや信託銀行、地方銀行が続々と取り扱いを始めました。特に住宅金融支援機構の【リ・バース60】が登場したことで取扱金融機関は大きく広がり、2026年6月末時点で約90の金融機関が取り扱う商品になっています。

本記事では、【リ・バース60】の仕組みと商品性を整理したうえで、機構が2026年8月28日に公表した最新の利用実績(2026年4〜6月分)から、いま誰がどんな目的で使っているのかを確認します。金利が上昇している局面ならではの注意点もあわせて押さえておきましょう。

リバースモーゲージとは?

リバースモーゲージとは、自宅(土地・建物)を担保に資金を借り入れ、契約者が亡くなったときに自宅の売却や相続人による一括返済で元本を返済するローンの一種です。自宅を所有しているものの現金収入が少ない高齢者世帯が、住み慣れた住居を手放さずに現金を確保できる点が最大の特徴です。

一般的な住宅ローンが元金と利息を毎月返済していくのに対し、リバースモーゲージは毎月の支払いが利息のみで、元金は契約満期または契約者の死亡時にまとめて返済します。資金の受け取り方は「毎月一定額を年金のように受け取る」「一括で受け取る」など金融機関によって異なります。返済時に自宅の売却額が借入残高に満たない場合は、金融機関が担保物件を処分して貸付金を回収する仕組みです。

住宅金融支援機構の【リ・バース60】とは?

リバースモーゲージが一気に広がった背景には、住宅金融支援機構の【リ・バース60】があります。これは満60歳以上の方向けに、住宅の建設・購入・リフォーム資金や住宅ローンの借り換えなどを対象とした、リバースモーゲージ型の住宅ローンです。住宅金融支援機構が直接融資するのではなく、提携する民間金融機関が機構の「住宅融資保険」を活用して提供し、それぞれ独自のプランにアレンジして展開しています。

機構が公表している商品概要のうち、押さえておきたい条件は次のとおりです(2026年9月時点)。

項目内容補足
対象年齢満60歳以上満50歳以上満60歳未満でも利用可能(融資限度額が異なる)
融資限度額担保評価額(住宅および土地)の50%または60%ただし1億2,000万円以下で所要資金以内。長期優良住宅かつ満60歳以上なら55%または65%、満50歳以上満60歳未満は30%
資金の使いみち住宅の建設・購入・リフォーム、住宅ローンの借り換え、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金など生活資金・投資用物件の取得資金は対象外
毎月の支払い利息のみ元金は契約者の死亡時に一括返済または担保物件の売却で返済
金利タイプ変動金利タイプ/固定金利期間選択タイプ/全期間固定金利タイプ全期間固定金利タイプは2025年1月6日から導入。このタイプはノンリコース型のみの取扱い

【リ・バース60】には、契約者の死亡時に担保物件を売却しても残った債務の返済を相続人に求めない「ノンリコース型」と、残った債務の返済を相続人に求める「リコース型」があります。機構によれば2025年度の申込件数の約99%がノンリコース型で、直近の2026年4〜6月に申請のあった案件は100%がノンリコース型でした。

なお、ノンリコース型で返済が不要になった残債務は債務免除益として一時所得が発生し、所得税等が課税される可能性があります。相続人の負担を残さない仕組みではありますが、税務上の扱いは税務署や税理士に確認しておきましょう。金利・利用条件・融資限度額などは金融機関ごとに異なるため、詳細は各取扱金融機関で確認が必要です。

リバースモーゲージ・リ・バース60の取扱金融機関

リバースモーゲージ(【リ・バース60】を含む)は、いまでは幅広い業態の金融機関で取り扱われています。代表的な取扱金融機関には次のようなところがあります。

【メガバンク・信託銀行】みずほ銀行/三井住友銀行/三菱UFJ銀行/りそな銀行/三井住友信託銀行 など
【地方銀行・第二地方銀行】北洋銀行/七十七銀行/静岡銀行/常陽銀行/千葉銀行/京都銀行/広島銀行/山口銀行/福岡銀行/西日本シティ銀行/琉球銀行 など

合併・商号変更により名称が変わっている金融機関もあります(例:かつての東京都民銀行は現在「きらぼし銀行」)。最新の取扱金融機関一覧は、住宅金融支援機構の【リ・バース60】公式サイトで地域から検索できます。各行で対象年齢・資金使途・融資限度額・金利タイプ(変動/固定金利期間選択/全期間固定)などが異なるため、利用を検討する際は複数の金融機関を比較しましょう。

【リ・バース60】と一般的なリバースモーゲージの違い

比較の観点【リ・バース60】(機構+提携金融機関)金融機関独自のリバースモーゲージ
対象年齢満60歳以上(満50歳以上満60歳未満も条件付きで可)50歳以上・55歳以上など金融機関により異なる
おもな資金使途住宅の建設・購入・リフォーム・借り換えなど住宅関連が中心(生活資金は不可)生活資金・医療費など幅広く使える商品もある
毎月の返済利息のみ(元金は契約者の死亡時に一括返済)利息のみが中心(商品による)
残債の扱いノンリコース型なら相続人に残債の返済義務なし(申込の大半がノンリコース型)リコース型が多く、残債の返済を求められる場合がある
提供のしくみ機構の住宅融資保険を活用し提携金融機関が提供各金融機関が独自に設計・提供

最新データで見る【リ・バース60】の使われ方(2026年4〜6月)

住宅金融支援機構は【リ・バース60】の利用実績を四半期ごとに公表しています。2026年8月28日公表の最新分(2026年4〜6月に申請のあった案件)から、借入申込者の実像を見てみましょう。

  • 申込者の平均年齢は70.6歳、平均年収は359万円。職業別では年金受給者が60.9%で最多、会社員16.4%、個人経営8.2%と続きます。
  • 平均の所要額は2,879万円、融資額は1,415万円、毎月の支払額は4.3万円。担保評価額の50〜60%が上限のため、所要額の半分程度を借り入れ、残りは自己資金や売却代金でまかなう形が一般的です。
  • 利用地域は神奈川県9.8%、東京都8.6%、兵庫県7.8%と、都市圏が中心です。
  • 住宅ローンを必要とする理由は「住宅が古い」が45.3%で突出しています。
リ・バース60の資金使途の構成比を示す横棒グラフ
生活費ではなく、建て替え・リフォーム・住み替えといった住まいの更新が中心。

資金使途は注文住宅30.9%、戸建てリフォーム27.7%、借り換え16.0%、新築マンション11.7%、中古マンション5.1%。「老後の生活費を借りる商品」というイメージとは異なり、実態は建て替え・リフォーム・住み替えといった住まいの更新に使われていることがわかります。

ただし利用件数そのものは減少しています。2026年4〜6月の申請戸数は256戸(前年同期比21.7%減)、実績戸数222戸(同23.2%減)、実績金額32.3億円(同36.3%減)でした。

金利上昇局面で起きている変化——全期間固定タイプへのシフト

件数全体が減るなかで、逆に大きく伸びている金利タイプがあります。2025年1月に導入された全期間固定金利タイプです。

リ・バース60の金利タイプ別申請戸数を前年同期と比較した棒グラフ
全体は減少する一方、全期間固定金利タイプの申請は前年同期の1.8倍に増えている。
金利タイプ2026年4〜6月の申請戸数前年同期比
変動金利等タイプ(変動・固定金利期間選択)209戸69.4%
全期間固定金利タイプ47戸180.8%

実績戸数で見ると全期間固定金利タイプは9戸から25戸へ、金額は0.9億円から3.7億円へと伸びています。背景には金利環境の変化があります。日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を終了し、2026年6月16日には政策金利を年1.0%程度へ引き上げました。長期金利も上昇し、2026年9月の大手行の住宅ローン金利は、変動型を引き上げた行と据え置いた行に分かれる一方、10年固定は大手5行すべてが引き上げと報じられています。

【リ・バース60】は毎月の支払いが利息のみであるぶん、金利上昇の影響が毎月の支払額にそのまま表れます。変動金利タイプで金利が見直されれば、その分だけ毎月の支払いが増えるということです。返済原資が年金中心の世帯にとって、支払額が動かない全期間固定金利タイプの安心感が選ばれている——という読み方ができます。

リバースモーゲージのメリット・注意点

メリットは、住み慣れた自宅に住み続けながら資金を確保できること、毎月の返済負担が利息のみで軽いこと、ノンリコース型を選べば相続人に残債の負担を残しにくいことです。

一方で注意点もあります。変動金利型では、金利が上昇すると毎月支払う利息が増えます。担保評価額が下落すると融資限度額が見直されることがあり、長生きした場合に契約期間中に融資限度額へ達する「長生きリスク」もあります。担保評価額は物件評価の50〜60%程度にとどまることが多く、推定相続人の同意が必要な金融機関もあります。契約前に、金利タイプ・限度額・残債の扱いをよく確認しておきましょう。

なお機構は2025年2月から、地方公共団体の補助金を利用して耐震改修工事を行う場合に、機構が利子補給することで無利子または低利子で【リ・バース60】を利用できる「耐震改修利子補給制度」を順次取り扱い始めています。対象となるには地方公共団体から利用対象証明書の交付を受けるなどの要件があり、取扱金融機関も限られるため、耐震改修を検討している場合は自治体と金融機関の双方に確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 借りたお金は何に使えますか?
A. 【リ・バース60】は住宅の建設・購入・リフォーム・住宅ローンの借り換え、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金など住宅関連が中心で、生活資金や投資用物件の取得には使えません。金融機関独自の商品では、生活資金など幅広い使途に対応するものもあります。

Q. 家族(相続人)に借金が残りませんか?
A. ノンリコース型を選べば、契約者の死亡後に担保物件を売却して残った債務があっても、相続人が返済する必要はありません。ただし返済が不要になった分は債務免除益として課税される可能性があります。リコース型は残債の返済を求められるため、契約前に必ず型を確認しましょう。

Q. マンションでも利用できますか?
A. 金融機関によって異なりますが、戸建てに加えてマンションを担保対象とする金融機関も増えています。実際、2026年4〜6月の資金使途では新築マンション11.7%・中古マンション5.1%と、マンションでの利用が一定の割合を占めています。担保評価の条件は各行で確認してください。

Q. いくらまで借りられますか?
A. 融資限度額は担保評価額の50%または60%(長期優良住宅で満60歳以上なら55%または65%、満50歳以上満60歳未満は30%)で、1億2,000万円以下かつ所要資金以内です。2026年4〜6月に申請のあった案件の平均融資額は1,415万円でした。

Q. 金利が上がったら毎月の支払いはどうなりますか?
A. 変動金利タイプの場合、金利が見直されると毎月の支払額(利息)が変わります。支払額を固定したい場合は全期間固定金利タイプを扱う金融機関を探す方法がありますが、取り扱う金融機関は限られます。各行の金利タイプと適用金利を必ず比較してください。

リバースモーゲージは、老後の住まいと資金計画に関わる重要な選択です。金利タイプ・対象年齢・資金使途・ノンリコースかどうかは金融機関ごとに差があります。最新の商品内容・取扱金融機関・金利は、住宅金融支援機構および各金融機関の公式サイトで必ずご確認ください。