住宅ローン市場の統計データを分析するイメージ

住宅ローン市場がいま拡大しているのか、縮んでいるのか。銀行・信用金庫・労働金庫・住宅金融支援機構といった業態ごとの内訳まで含めて把握できる公的な統計が、住宅金融支援機構の「業態別の住宅ローン新規貸出額及び貸出残高の推移」です。

日本銀行の統計に各業界団体の協力を加えて集計されているもので、新規貸出額は四半期ごと、貸出残高は年度末ベースで公表されます。ここでは公表されている最新データを整理し、あわせて個人が住宅ローンを選ぶときにこの統計をどう読むかまでまとめます。

最新データ:2025年度4〜12月の新規貸出額は16兆684億円

機構が2026年3月19日に公表した最新の四半期概要によると、2025年度10〜12月期の個人向け住宅ローン新規貸出額は5兆4,510億円(前年度同期比4.0%増)でした。これにより2025年度の4〜12月の累計は16兆684億円(前年度同期比0.8%増)となっています(集計は2026年3月3日現在)。

業態別の内訳は次のとおりです。

業態2025年度4〜12月累計前年度同期比
国内銀行12兆6,267億円0.2%減
信用金庫1兆1,912億円7.1%増
労働金庫1兆1,784億円1.6%増
住宅金融支援機構(買取債権)7,139億円24.8%増
住宅金融専門会社等1,888億円24.9%減
信用組合1,566億円6.0%増
生命保険会社103億円77.3%減
住宅金融支援機構(直接融資)25億円1.5%増
合計16兆684億円0.8%増
業態別の住宅ローン新規貸出額を比較した横棒グラフ
国内銀行が12兆6,267億円と全体の約8割を占める。生命保険会社(103億円)と機構の直接融資(25億円)は規模が小さいため図では省略。

グラフにすると一目でわかるとおり、国内銀行だけで全体の約8割(78.6%)を占めています。住宅ローンは事実上、銀行の主力商品であることが数字からも確認できます。

前年同期比で見ると、伸びている業態は分かれている

業態別の住宅ローン新規貸出額の前年度同期比を示した棒グラフ
全体の約8割を占める国内銀行はほぼ横ばい。フラット35を含む機構の買取債権が24.8%増と伸びている。

金額の規模ではなく伸び率で見ると、市場の中で起きている変化が見えてきます。

  • 国内銀行は0.2%減とほぼ横ばい。全体の8割を占める業態が横ばいなので、市場全体の伸びも0.8%増と小幅にとどまりました。
  • 住宅金融支援機構(買取債権)が24.8%増と大きく伸びています。この区分は【フラット35】(買取型)として機構が金融機関から買い取った住宅ローン債権の実行分で、長期固定金利型の利用が増えていることを示す動きと読めます。
  • 信用金庫が7.1%増、信用組合が6.0%増と、地域金融機関が堅調です。
  • 一方で住宅金融専門会社等は24.9%減、生命保険会社は77.3%減と大きく落ち込んでいます。ただし金額の規模が小さいため、市場全体への影響は限定的です。

金利の先行きに関する見方が分かれる局面では、返済額を確定できる長期固定金利型に関心が向かいやすいと言われます。機構の買取債権の伸びは、その傾向と整合的な動きといえるでしょう。ただし、統計の増減はキャンペーンや商品改定など個別の事情にも左右されるため、一つの四半期の数字だけで断定はできません

年度ベースで見た市場の規模

年度の確定値としては、2024年度の新規貸出額は21兆9,436億円(前年度比5.1%増)2024年度末の貸出残高は227兆1,743億円(前年度比2.7%増)でした(機構が2025年8月15日に公表)。

新規貸出額は毎年20兆円前後で推移する一方、残高は220兆円を超える規模です。すでに借りている人のローンが積み上がっている市場であることがわかります。借り換えの検討者が多いのも、この残高の厚みが背景にあります。

この統計を読むときの3つのポイント

1. 「新規貸出額」と「貸出残高」は別物

新規貸出額はその期間に新しく実行された金額、貸出残高は過去の分も含めて残っている金額です。新規貸出額が減っても、返済が進むペースを上回っていれば残高は増えます。ニュースで「住宅ローンが減った/増えた」と言うとき、どちらを指しているのかを確認しましょう。

2. 公表のサイクルが違う

時系列データ(新規貸出額・貸出残高)は年1回(8月ごろ)にExcel形式で更新され、その間の新規貸出額は四半期ごと(9月・12月・3月ごろ)に概要のPDFで公表されます。残高の最新値を見たい場合は年1回の時系列データを参照してください。

3. 数値はさかのぼって修正されることがある

機構自身が「引用している統計等のデータが過去にさかのぼって修正される場合がある」と注記しています。過去の記事やまとめの数字と食い違う場合は、最新の時系列データを正としてください

個人がこの統計をどう使うか

市場全体の規模を知ることは、住宅ローン選びに直接は結びつきません。ただし「どの業態にどんな選択肢があるか」を整理する地図としては役に立ちます。

業態主な特徴検討時の視点
国内銀行(都市銀行・地方銀行・ネット銀行)市場の約8割。変動金利型の品ぞろえが厚い金利水準に加えて事務手数料の方式(定率/定額)と団信の内容で比べる
信用金庫・信用組合地域密着。営業エリアや会員資格の条件がある地元物件・自営業などで相談しやすい場合がある。金利は各庫で個別に確認
労働金庫会員(労働組合員等)を中心とした取り扱い勤務先が会員団体かどうかで条件が変わる
住宅金融支援機構(【フラット35】)全期間固定金利。取扱金融機関を通じて申し込む同じフラット35でも金利・事務手数料は取扱金融機関ごとに異なる

シェアが大きい業態が自分にとって最適とは限りません。実際の比較では、金利だけでなく事務手数料・保証料・団信まで含めた総費用で並べ、そのうえで各金融機関の最新の適用金利を確認するのが確実です。

よくある質問

Q. この統計はどこで見られますか?

A. 住宅金融支援機構の公式サイト「業態別の住宅ローン新規貸出額及び貸出残高の推移」のページで、四半期ごとの概要(PDF)と年1回更新の時系列データ(Excel)が無料で公開されています。

Q. 【フラット35】はどの業態に計上されますか?

A. 【フラット35】(買取型)は取扱金融機関が実行したあとに機構が債権を買い取る仕組みのため、この統計では「住宅金融支援機構(買取債権)」の区分に計上されます。窓口となった銀行の数字としては現れません。

Q. アパートローンや投資用ローンも含まれますか?

A. この調査は個人向け住宅ローンが対象です。賃貸住宅を取得するためのアパートローンなどは別の区分で扱われます。用途の異なるローンを同じ土俵で比べないよう注意してください。

Q. 四半期の増減だけで金利の先行きを判断できますか?

A. できません。新規貸出額は住宅の着工・取引の動きや各行のキャンペーンにも左右されます。金利の見通しについては、日本銀行の金融政策や長期金利の動向など別の情報とあわせて判断してください。

まとめ

最新の公表値では、2025年度4〜12月の新規貸出額は16兆684億円(前年度同期比0.8%増)で、国内銀行が約8割を占める構図は変わらないものの、フラット35を含む機構の買取債権が24.8%増と伸びている点が目を引きます。市場全体としては大きく崩れることなく、長期固定金利型への関心が高まっている——というのが数字から読み取れる姿です。

統計は四半期ごとに更新され、過去にさかのぼって修正されることもあります。最新の数値は住宅金融支援機構の公式サイトでご確認ください。