
住宅ローンを選ぶとき、多くの人がまず見るのは表示されている金利です。ところが、実際に返していく金額を左右するのは金利だけではありません。事務手数料・保証料・団信の上乗せ金利・繰上返済のルールまで含めた「総費用(トータルコスト)」で並べると、金利の順位がひっくり返ることは珍しくありません。
このページでは、当サイトが各社を比較するときに使っている「実質金利」の考え方を軸に、総費用で住宅ローンを比べる手順を整理します。金利水準そのものは毎月動きますが、ここで扱う費用の構造(どこにいくらかかるか)は商品ごとにほぼ固定なので、一度覚えると長く使えます。
なぜ「金利だけの比較」では足りないのか
住宅ローンのコストは、大きく次の2つに分かれます。
- 借入期間を通じて発生するコスト=利息、団信の上乗せ金利
- 借入時に一度だけ発生するコスト=事務手数料(取扱手数料)、保証料、印紙税・登記費用など
厄介なのは、この2つが商品ごとに違う配分で組み合わされていることです。たとえば同じ銀行でも「金利を低くする代わりに借入額の2.20%(税込)の手数料をもらう商品」と「手数料は数万円の定額だが金利はやや高い商品」の両方を用意していることがあります。金利表だけを横に並べても、前者が有利に見えるだけで、実際にどちらが安いかは借入額と借入期間しだいです。
だからこそ、比較の土俵をそろえる必要があります。当サイトでは、一度きりの費用を金利に換算して足し戻す方法(=実質金利)を使っています。
総費用に含まれる主な項目
まず、何を数え上げるのかを確認しておきましょう。金融機関によって「かかる/かからない」がはっきり分かれる項目ほど、比較の差がつきます。
| 費用の種類 | 相場・タイプ | 比較時の注意点 |
|---|---|---|
| 事務手数料(取扱手数料) | 借入額×2.20%(税込)の定率型/数万円の定額型 | 金額の差が最も大きい。定率型は借入額に比例して増える |
| 保証料 | 0円(ネット系に多い)/借入額の約2%前後(外枠)または金利上乗せ(内枠) | 「保証料0円」でも事務手数料が定率のことが多く、合計で見る必要がある |
| 団信(団体信用生命保険) | 一般団信は上乗せなしが主流/がん・3大疾病などの特約は年0.1〜0.3%程度の上乗せ | 上乗せ幅は完済まで効くため、実質的な金利差として扱う |
| 繰上返済手数料 | 0円(ネット手続き)/数千円〜数万円 | 繰上返済を前提にするなら、無料かどうかで総返済額が変わる |
| 印紙税・電子契約手数料 | 紙の契約は印紙税/電子契約は手数料5,500円(税込)などの例あり | 金額は小さいが、電子契約の可否は手続きの手間にも直結 |
| 登記費用・火災保険料 | 物件・司法書士・保険内容による実費 | どの金融機関でも発生。比較の差はつきにくい |
このうち比較で効いてくるのは、上の4つ(事務手数料・保証料・団信・繰上返済手数料)です。登記費用や火災保険料は物件側の事情で決まるため、金融機関選びの判断材料にはなりにくいと考えてよいでしょう。
諸費用を金利に換算する「実質金利」の考え方
当サイトが使っている実質金利は、事務手数料や保証料といった一度きりの費用を、借入期間で割りならして金利に上乗せしたらどれくらいかを示す簡易的な指標です。欧米で使われているAPR(Annual Percentage Rate=年換算した実質年率)と発想は同じで、「金利+費用」をひとつの数字で見比べられるようにするためのものです。
目安として、借入額×2.20%(税込)の定率型手数料は、35年返済でおおむね年0.2%程度の金利上乗せに相当します。つまり、
- A行:金利0.95%+事務手数料2.20%(定率)→ 実質はおよそ1.15%相当
- B行:金利1.15%+事務手数料44,000円(定額)→ 実質はほぼ1.15%のまま
という具合に、表示金利で0.2%差がついていても、実質ではほぼ互角ということが起こります。逆にいえば、金利差が0.2%より小さいのに一方だけ定率手数料がかかるなら、表示金利が低いほうが割高という逆転もあり得るわけです。
※上記はあくまで概算の目安です。借入額・返済期間・繰上返済の予定によって換算値は変わるため、最終的な判断は各金融機関の返済シミュレーションで確認してください。
事務手数料は「定率型」と「定額型」で桁が変わる
総費用の差が最も大きく出るのが事務手数料です。定率型(借入額×2.20%・税込)と定額型では、借入額が増えるほど金額差が開きます。

実例で見てみましょう。ソニー銀行は同じ銀行のなかに両方のタイプを用意しています(2026年7月31日時点・商品詳細説明書で確認)。
| 商品 | 取扱手数料 | 特徴 |
|---|---|---|
| 住宅ローン | 44,000円(税込)の定額 | 初期費用を抑えたい人・借り換えで諸費用を上乗せしたくない人向け |
| 変動セレクト住宅ローン/固定セレクト住宅ローン | 融資金額×2.20%(税込) | 手数料を負担する代わりに金利が優遇されるタイプ |
いずれも保証料は0円、繰上返済手数料も0円(1万円以上1円単位でネット手続き)で、団信の保険料は銀行負担です。つまり「金利を取るか、初期費用を取るか」という選択に論点が絞られている構造で、比較のしやすさという点では分かりやすい設計といえます。
いっぽうSBI新生銀行の事務手数料は借入金額×2.20%(税込)の定率型です(同行公式で2026年7月31日時点を確認)。かつて存在した定額型の取り扱いはなく、現在は定率型に一本化されている点は、古い比較記事を読むときの注意点です。そのうえで、保証料0円・一部繰上返済手数料0円・一般団信の上乗せ0円とコスト項目が整理されており、手数料や諸費用を借入金額に含めて申し込める点も、自己資金を手元に残したい人には検討しやすい仕組みです(電子契約を利用する場合は印紙税が不要になる代わりに電子契約利用手数料5,500円(税込)が必要)。
またドコモの銀行(旧・住信SBIネット銀行)のように、WEB完結のコースと店舗で相談できるコースを分けている金融機関もあります。同行の【フラット35】(買取型)の融資事務手数料は2.20%(税込・最低11万円)です。フラット35は商品性が全国共通でも事務手数料は取扱金融機関ごとに異なるため、金利だけでなく手数料まで含めて見比べてください。
保証料・団信・繰上返済のチェックポイント
保証料は「0円」の意味を確認する
ネット系銀行に多い「保証料0円」は、保証会社を使わない代わりに定率の事務手数料で費用を回収しているケースがほとんどです。対して都市銀行・地方銀行では、保証料を一括で前払いする「外枠方式」と、金利に上乗せする「内枠方式」を選べることがあります。どの方式でも総額はゼロにならないと考え、名目ではなく合計金額で比べるのが安全です。
団信の上乗せ金利は完済まで効き続ける
がん保障や3大疾病保障などの特約は、多くの場合年0.1〜0.3%程度の金利上乗せで付帯します。一度きりの手数料と違い、上乗せ分は借入期間を通じてかかり続けるため、総費用への影響は決して小さくありません。保障の中身(給付条件)まで含めて、必要なものだけを選ぶ姿勢が大切です。
繰上返済の手数料と単位
繰上返済を積極的に使うつもりなら、手数料が無料か、いくらから返済できるかを確認しましょう。1万円単位・1円単位でネットから手数料無料という金融機関であれば、余裕資金をこまめに投入して利息を圧縮できます。
借り換えでは「諸費用を何年で回収できるか」で見る
借り換えの場合は、金利差だけを見ても判断できません。新しいローンの諸費用(事務手数料+登記費用など)を、金利差による軽減額で何年かけて取り戻せるかが判断軸になります。
- 現在のローンの残高・残り期間・金利を確認する
- 借り換え先の金利と諸費用(定率か定額か)を確認する
- 金融機関の借り換えシミュレーションで、諸費用込みの総返済額を比べる
- 残り期間が短い・残高が少ないほど、定額型の手数料が有利になりやすい
残り期間が10年程度まで短くなっていると、定率型の手数料を金利差で回収しきれないことがあります。「金利が下がる=得」ではなく「諸費用を含めて総返済額が減るか」で見てください。
総費用で比較するときのチェックリスト
| 確認する項目 | 見るポイント | 備考 |
|---|---|---|
| 事務手数料 | 定率型か定額型か。定率なら借入額に掛けた実額 | 借入額が大きいほど定率型の負担が重い |
| 保証料 | 0円か、外枠(前払い)か、内枠(金利上乗せ)か | 0円でも手数料で回収されている場合がある |
| 団信の上乗せ | 付けたい保障の上乗せ幅(年0.1〜0.3%程度) | 完済までかかるため実質金利に加える |
| 繰上返済 | 手数料の有無・最低金額・ネット対応 | 繰上返済を使う人ほど差が出る |
| 電子契約 | 印紙税の要否と電子契約手数料 | 金額は小さいが手続きの手間に影響 |
| 金利の見直しルール | 変動金利の見直し時期、5年ルール・125%ルールの有無 | ルールの有無で返済額の変わり方が異なる |
最後の「金利の見直しルール」は費用ではありませんが、金利上昇局面では総返済額の実感に直結します。たとえばソニー銀行はいわゆる5年ルール・125%ルールを採用していないと明示しており、金利の変動に応じて返済額そのものを見直す設計です。ルールの有無は良し悪しではなく性格の違いなので、自分の家計がどちらに耐えられるかで選んでください。
よくある質問
Q. 事務手数料は自己資金で用意しないといけませんか?
A. 金融機関によっては、手数料や諸費用を借入金額に含めて申し込めます。ただし借入額が増えれば利息も増えるため、手元資金とのバランスで判断してください。取り扱いは各社で異なるので、申込前に公式サイトで確認しましょう。
Q. 定率型と定額型、結局どちらが得ですか?
A. 借入額が大きく、長期間しっかり借りるなら金利が低い定率型が有利になりやすく、借入額が小さい・返済期間が短い・数年内に繰上返済で完済する予定があるなら定額型が有利になりやすい傾向です。両方の総返済額をシミュレーションで比べるのが確実です。
Q. 繰上返済で早く完済したら、払った事務手数料は戻りますか?
A. 定率型の事務手数料は借入時に一括で支払うもので、原則として繰上返済しても返還されません。早期完済を予定しているなら、この点も含めて定額型と比べてください。
Q. フラット35なら、どの金融機関で借りても総費用は同じですか?
A. 同じではありません。金利は取扱金融機関ごとに設定でき、融資事務手数料も金融機関によって大きく異なります。同じフラット35でも総費用に差が出るため、必ず取扱金融機関ごとに比較してください。最新の金利・手数料は各金融機関および住宅金融支援機構の公式サイトでご確認ください。
まとめ
住宅ローンの比較は、「表示金利」→「実質金利(金利+一度きりの費用)」→「総返済額」の順に精度を上げていくと迷いません。金利は毎月動きますが、事務手数料が定率か定額か、保証料や繰上返済手数料がかかるかといった費用の構造は変わりにくいため、まずは構造で候補を絞り、最後に当月の適用金利で詰めるのが効率的です。
なお、金利・手数料・団信の内容は各金融機関の判断で変更されます。最新の条件は必ず各金融機関の公式サイトでご確認ください。
