高齢者の住まいと賃貸住宅をイメージしたイラスト

「高齢になると賃貸住宅が借りにくい」という話を、都市伝説のように感じる方もいるかもしれません。しかし、これは実際に起きている問題で、国が対策に乗り出すほど大きな社会課題になっています。

その対策の柱が住宅セーフティネット法です。2017年の改正で、高齢者など「住宅確保要配慮者」の入居を拒まない「セーフティネット住宅」の登録制度がつくられました。さらに2024年に法改正され、2025年(令和7年)10月1日からは「居住サポート住宅」制度などが始まっています。これは、安否確認用センサーの設置や居住支援法人による見守り・生活相談、福祉窓口へのつなぎなどを通じて、大家・入居者の双方が安心できる仕組みを整えるものです(あわせて「高齢者住まい法」も改正され、終身建物賃貸借の手続きが簡素化されています)。

高齢社会と賃貸住宅の関係

厚生労働省などのデータによると、65歳以上で一人暮らしをする人の割合は1986年には約3%でしたが、2015年には約12%へと、30年で4倍に増えました。高齢化と単身化は今後も進む見通しです。単身の高齢者が賃貸住宅で体調を崩して倒れ、そのまま亡くなる「孤独死」のケースも増えると考えられています。

また「下流老人」という言葉があるように、収入が著しく少なく十分な貯蓄もなく、頼れる人もいない高齢者は少なくありません。こうした背景から、高齢者が賃貸住宅を契約しようとする際に、大家が保証人の不在や孤独死を懸念して入居を敬遠し、契約を断られるケースが生じています。

なぜ高齢者は賃貸住宅を借りにくいのか?

賃貸住宅内で孤独死があった場合、相続人や連帯保証人が対応にあたることになり、現実には難しい問題に直面します。発見が遅れて室内に損傷や臭気が生じると、原状回復のためのリフォームや特殊清掃の費用がかかり、これらが相続人・連帯保証人に請求される可能性があります。次の入居者が決まらず家賃を減額せざるを得ない場合、その補償を求められて紛争に発展する例もあります。

こうした「事故物件」をめぐる告知義務については、2021年に国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表し、取り扱いの目安が示されました。ポイントは次のとおりです。

死の態様(賃貸の例)告知の要否備考
自然死・日常生活の中の不慮の死(老衰・病死・転倒・誤嚥など)原則として告知不要ただし特殊清掃等が行われた場合は告知が必要
自殺・他殺・特殊清掃を伴う死原則として告知が必要賃貸ではおおむね事案発生から約3年が一つの目安とされる
買主・借主から問われた場合等期間・死因に関わらず告知社会的影響が大きい事案も同様

つまり、自然死や日常生活の中の不慮の死は、賃貸では原則として「心理的瑕疵」にあたらず告知不要とされ、過去の裁判例でも自然死を心理的瑕疵と認めなかったものがあります。住まいは生活の本拠であり、そこで人が亡くなることはある程度予見できる、という考え方です。一方で、特殊清掃が必要になった場合や社会的影響の大きい事案は告知の対象になります。

なお、連帯保証人の責任範囲は家賃の滞納や原状回復費用など賃貸契約全体に及びます。契約後も入居者と疎遠にならないよう、ときどき連絡を取り、仕事や体調などの状況を確認しておくと安心です。

賃貸物件オーナーの視点で見た課題

貸し主の立場で考えると、入居者に高齢者がいることは前述のようなリスクを伴い、物件価値に影響すると感じるのも自然です。このため、長く住んでいた高齢者が、高齢になってから退去を促されるケースもあるといいます。居住サポート住宅や家賃債務保証などの仕組みは、こうした大家側の不安を和らげる狙いがあります。

賃貸か、持ち家(マイホーム)かという選択

内閣府・厚生労働省の調査では、高齢者世帯でも平均的な所得水準であれば一定の生活基盤がありますが、住居費の負担は続き、要介護になった場合などを考えると決して楽とは言えません。賃貸であれば家賃を払い続ける必要があり、持ち家であっても住宅ローンが高齢期まで残っていれば返済が続きます。

住宅ローンは「高齢期に残さない」設計を

持ち家の場合は、住宅ローンを高齢になっても残さない返済計画が理想です。完済時年齢を75〜80歳までとする金融機関が多いですが、退職後に返済を抱え込まないよう、たとえば30歳前後で30〜35年ローンを組み、60〜65歳で完済を目指すといった設計が安心です。繰上返済を計画的に活用するのも有効です。

金利環境は変化しています。2026年6月に日本銀行が政策金利を1.0%程度へ追加利上げし、フラット35など長期固定金利は2026年に3%台まで上昇する一方、変動金利は依然低めの水準にあります。今後の金利は上下双方の可能性があるため、「変動で借りて上がったら固定に借り換える」という戦略は、長期金利に連動する固定金利が先に上がりやすい点に注意が必要です。返済を堅実に進めたい人は、固定金利での借り入れや、ボーナス併用に頼りすぎない一定額返済を検討するとよいでしょう。最新の金利は各金融機関・住宅金融支援機構の公式サイトでご確認ください。

住宅ローンを選ぶ際は、金利だけでなく諸費用・団信もあわせて比較するのがおすすめです。たとえばSBI新生銀行は保証料0円・一般団信の上乗せ0円など諸費用の分かりやすさに特長があり、店舗とオンラインの両方に対応している点も含め、検討に値する選択肢の一つです(最新の金利・手数料は公式サイトでご確認ください)。

よくある質問(FAQ)

Q. 高齢者でも賃貸住宅は借りられますか?
A. 借りられます。住宅セーフティネット法にもとづく「セーフティネット住宅」や、2025年10月に始まった「居住サポート住宅」、居住支援法人による入居相談・家賃債務保証・見守りなどの支援があります。

Q. 賃貸で人が自然死した部屋は、必ず告知されますか?
A. 2021年の国交省ガイドラインでは、賃貸の自然死や日常生活の中の不慮の死は原則告知不要とされています。ただし特殊清掃が行われた場合や、借主から問われた場合などは告知の対象になります。

Q. 老後に備えて住宅ローンはどう組めばよいですか?
A. 完済時年齢が高齢期に及ばないよう、早めに借りて60〜65歳ごろの完済を目指すのが理想です。繰上返済の活用や、金利・諸費用・団信を含めたトータルでの比較もポイントです。

 

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