住宅ローン控除でマイホーム購入の税負担を軽くするイメージ

住宅ローンを組んでマイホームを購入したときに、所得税や住民税が軽減される住宅ローン控除(正式名称:住宅借入金等特別控除。住宅ローン減税とも呼ばれます)。この制度は数年ごとに内容が見直されており、いつ入居するか・どんな性能の住宅か・どの世帯かによって受けられる金額が大きく変わります。ここでは令和8年度税制改正を反映した2026年8月時点の制度にもとづき、控除率・控除期間・借入限度額を新築と中古で横並びに整理します。

なお、住宅ローン控除の内容は税制改正で頻繁に変わります。実際に申告する際は、必ず国税庁国土交通省(住宅ローン減税)の最新情報で、ご自身の入居年・住宅の要件をご確認ください。

令和8年度税制改正で変わった5つのポイント

まず、2026年(令和8年)以降に入居する方に関係する改正点を先に押さえておきましょう。関連する税制法は2026年(令和8年)3月31日に国会で成立し、国土交通省が2026年6月に公表内容を更新しています。

改正項目内容
適用期限5年延長。入居日が2026年(令和8年)1月1日から2030年(令和12年)12月31日までなら適用可能
省エネ性能の高い中古(既存)住宅①借入限度額を引き上げ ②子育て世帯・若者夫婦世帯の上乗せを適用 ③控除期間を10年から13年へ拡充
床面積要件新築・既存とも40㎡以上に緩和(合計所得金額1,000万円超の方、子育て世帯等への上乗せ措置を利用する方は50㎡以上)
新築の省エネ要件建築確認が2028年(令和10年)以降の「省エネ基準適合住宅」は適用対象外(登記簿上の建築日が2028年6月30日までのものは対象)
新築の立地要件入居日が2028年(令和10年)以降の場合、災害レッドゾーンの新築住宅は適用対象外(建替え・既存住宅・リフォームは対象)

大きな流れは「既存住宅の活用」と「省エネ・安全な立地への誘導」です。中古住宅の条件が新築に近づく一方で、新築側は省エネ性能と立地の条件が段階的に厳しくなります。

住宅ローン控除とはどんな制度?

私たちは、働いたり資産運用をしたりして収入を得ると、その金額に応じて国に所得税を、市区町村などに住民税を納めます。

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを取得・新築・増改築したときに、年末の住宅ローン残高に応じた金額が、納めるべき所得税(控除しきれない分は一部が住民税)から差し引かれる制度です。すでに源泉徴収(天引き)された所得税があれば、その分が還付されることもあります。

2022年(令和4年)の改正で控除率は年末残高の0.7%になり、2026年(令和8年)の改正では適用期限が令和12年(2030年)末入居まで5年延長されました。利用者の職業は問わず、要件を満たせば自営業者も利用でき、自宅兼店舗の物件にも床面積の割合に応じて適用できます。

住宅ローン控除の主な要件

住宅ローン控除を受けるための主な要件は、次のとおりです(新築・中古・増改築で細部が異なります)。

要件内容
住むための住宅引き渡しまたは工事完了から原則6か月以内に入居し、その年の12月31日まで引き続き自分が住んでいること(投資用・別荘は対象外)
床面積登記簿表示上の床面積が原則40㎡以上(令和8年度改正で新築・既存とも50㎡以上から緩和)。ただし合計所得金額1,000万円超の方や、子育て世帯等の上乗せ措置を利用する場合は50㎡以上。1/2以上が自己居住用であること
合計所得金額控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下
返済期間住宅ローンの返済期間(償還期間)が10年以上
住宅の性能(新築)原則として省エネ基準への適合が必要(不適合の「その他の住宅」は経過措置を除き対象外)。さらに建築確認が2028年以降の省エネ基準適合住宅も対象外
中古(既存)住宅耐震基準に適合するものとして証明等がされていること(1982年1月1日以前に建築された住宅は、耐震基準適合証明書などの提出が必要)

※床面積要件・省エネ要件は改正が多い項目です。最新の条件は必ず公式サイトでご確認ください。

控除率・控除期間と借入限度額(新築・買取再販)

控除額は、「年末の住宅ローン残高 × 0.7%」で計算します。ただし対象になるのは、住宅の性能ごとに定められた「借入限度額」までです。まず新築住宅を見てみましょう。「子育て世帯」は19歳未満の扶養親族がいる方、「若者夫婦世帯」は配偶者のいる40歳未満の方、または40歳未満の配偶者のいる40歳以上の方を指します。

住宅の種類(新築)子育て世帯・若者夫婦世帯その他の世帯控除期間
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅5,000万円4,500万円13年間
ZEH水準省エネ住宅4,500万円3,500万円13年間
省エネ基準適合住宅3,000万円2,000万円13年間(※)
その他の住宅(省エネ基準不適合)原則 対象外(2023年末までに建築確認を受けた等の経過措置で借入限度額2,000万円)10年間

省エネ基準適合住宅は、建築確認が2028年(令和10年)以降のものは適用対象外です。2027年末までに建築確認を受けた住宅、または登記簿上の建築日が2028年6月30日以前の住宅が2028年〜2030年に入居する場合は、借入限度額2,000万円・控除期間10年となります。

◆買取再販住宅(宅地建物取引業者が一定の増改築等を行った中古住宅)は、増改築後に省エネ基準適合住宅以上の性能になっていれば、新築と同じ水準(認定住宅5,000/4,500万円、ZEH水準4,500/3,500万円、省エネ基準適合3,000/2,000万円・いずれも13年間)で適用を受けられます。その他住宅は2,000万円・10年間です。

中古(既存)住宅の借入限度額は13年に拡充

令和8年度改正でもっとも変わったのが中古住宅です。これまで一律10年間だった控除期間が、省エネ性能のある住宅は13年間に延び、子育て世帯・若者夫婦世帯の上乗せも使えるようになりました。

住宅の種類(中古・既存)子育て世帯・若者夫婦世帯その他の世帯控除期間
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅4,500万円3,500万円13年間
ZEH水準省エネ住宅4,500万円3,500万円13年間
省エネ基準適合住宅3,000万円2,000万円13年間
その他の住宅2,000万円10年間
新築と中古住宅の住宅ローン控除の借入限度額を性能区分別に比較した棒グラフ
令和8年度改正でZEH水準以上の中古住宅は新築と同水準になった(子育て世帯等の上乗せ前)

※「認定住宅」とは、耐震性や省エネ性などが優れていると認定された「認定長期優良住宅」または「認定低炭素住宅」のことです。借入限度額は入居年と住宅性能で細かく異なり改正も頻繁なため、必ず国税庁・国土交通省の最新情報でご確認ください。

ZEH水準以上の中古住宅なら、その他の世帯で3,500万円・13年間と新築のZEH水準省エネ住宅とまったく同じ条件になります。中古の省エネ性能を確認する手間はかかりますが、購入候補の幅を広げる価値は十分にあるでしょう。

住民税からも控除される(上限あり)

住宅ローン控除では、まず本来支払うべき所得税額から控除額が差し引かれ、その結果、給与所得者の給料・ボーナスや、自営業者などで源泉徴収された所得税があれば、金額によってはすでに納めた所得税が還付されます。所得税額から控除しきれず余りがあるときは、その分を住民税からも控除できます。ただし住民税からの控除は、前年分の所得税の課税総所得金額等の5%(最高97,500円)が上限です。この住民税分については、市区町村への申告は不要です。

控除額のイメージ(具体例)

同じ借入額でも、住宅の性能によって控除額が変わります。年末の住宅ローン残高が3,000万円だった年を例に、その他の世帯(子育て世帯等の上乗せなし)で比べてみます。

住宅の性能(新築)借入限度額控除の対象になる残高その年の控除額の目安
ZEH水準省エネ住宅3,500万円3,000万円(残高全額)21万円
省エネ基準適合住宅2,000万円2,000万円(限度額まで)14万円

このように、残高が借入限度額を超えている年は、超えた部分は控除の対象になりません。住宅ローン残高は返済が進むほど減るため、控除額も年々少なくなっていきます。また、実際に戻る金額は、ご自身が納めた所得税・住民税の額の範囲内です。

住宅ローン控除の手続きと必要書類

住宅ローン控除を受けるには、入居した翌年の確定申告期間内(原則として翌年3月15日まで)に、税務署へ所得税の確定申告をします。住民税については別途の手続きは不要です。所得税の確定申告に主に必要な書類は次のとおりです。

書類主な入手先
確定申告書/住宅借入金等特別控除額の計算明細書税務署・国税庁ホームページ
住宅ローンの年末残高証明書借入先の金融機関
建物・土地の登記事項証明書法務局
売買契約書・工事請負契約書の写し不動産会社・施工会社
本人確認書類(マイナンバー関係書類)本人
住宅の性能を示す証明書(住宅省エネルギー性能証明書・建設住宅性能評価書・認定通知書等)建築会社・登録住宅性能評価機関等
耐震基準を満たすことの証明書(1982年1月1日以前に建築された中古住宅の場合)建築士事務所・登録住宅性能評価機関等

税務署が配布する書類は、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」でパソコンやスマートフォンから入力して作成できます。医療費控除など他に確定申告が必要な事由がある人は、あわせて申告できます。

性能を示す証明書は、住宅の取得日までに調査・評価が終わっている必要があるものがあります。引き渡し後に慌てないよう、契約前の段階で「どの区分で減税を受けるのか」「証明書は誰が手配するのか」を、施工会社や不動産会社に確認しておくと安心です。

2年目以降も住宅ローン控除を受けるには、控除期間(最長13年間)にわたって毎年申告が必要ですが、給与所得者は通常、2年目からは勤務先の年末調整で控除を受けられます。その際は、税務署から送られる「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」と、金融機関の「年末残高証明書」を勤務先に提出します。

住宅ローン控除は、自分で申告しないと受けられません。初年度の確定申告を忘れないようにしましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 共働き夫婦で住宅ローンを組むと、二人とも控除を受けられますか?
A. 夫婦それぞれが住宅ローン(ペアローンや連帯債務)を負担し、住宅の持分を持っていれば、それぞれが自分の負担分について控除を受けられます。共働きで二人とも十分な所得税を納めている世帯は、控除を使い切りやすくなります。

Q. 中古住宅でも13年間の控除を受けられますか?
A. 令和8年度改正により、省エネ性能のある中古住宅(認定住宅・ZEH水準・省エネ基準適合)は控除期間が13年間になりました。性能の証明がない「その他の住宅」は従来どおり2,000万円・10年間です。中古を検討する際は、住宅省エネルギー性能証明書などを取得できるかを売主・仲介会社に早めに確認しましょう。

Q. 40㎡台のコンパクトな住宅でも使えますか?
A. 令和8年度改正で床面積要件が新築・既存とも40㎡以上に緩和されたため、対象になります。ただし合計所得金額が1,000万円を超える年は適用されず、子育て世帯等の上乗せ措置を利用する場合は50㎡以上が必要です。なお床面積は登記簿表示上(内法)の面積で判定するため、広告に載っている壁芯面積とは異なる点に注意してください。

Q. 繰り上げ返済をすると控除はどうなりますか?
A. 繰り上げ返済で年末残高が減ると、その分その年以降の控除額も小さくなります。また、繰り上げ返済の結果、当初からの返済期間が10年未満になると、その時点で住宅ローン控除を受けられなくなる点に注意が必要です。控除期間中に繰り上げ返済をするかどうかは、適用金利が控除率0.7%を上回るか下回るかが一つの目安になります(実際は諸費用や団信の内容、手元資金の余裕も含めて判断してください)。

Q. 控除額が所得税より大きいと、払った税金以上に戻りますか?
A. いいえ。還付されるのは、あくまでその年に納めた所得税(と上限内の住民税)の範囲内です。控除額のほうが大きくても、納めた税額を超えて戻ることはありません。借入限度額が大きい住宅ほど有利に見えますが、納税額が少ない世帯は限度額まで使い切れないことがあります。

Q. 2028年以降に新築する場合、注意することはありますか?
A. 2点あります。ひとつは省エネ性能で、建築確認が2028年(令和10年)以降の「省エネ基準適合住宅」は対象外となるため、実質的にZEH水準以上が求められます。もうひとつは立地で、入居日が2028年以降の場合、土砂災害特別警戒区域などの災害レッドゾーンに新築した住宅は対象外になります(建替え・既存住宅の取得・リフォームは対象)。土地探しの段階からハザードマップを確認しておきましょう。

Q. 制度はこの先も変わりますか?
A. 住宅ローン控除は税制改正で頻繁に見直されています。今回の改正でも省エネ要件と立地要件が段階的に厳しくなることが決まっており、入居の時期によって条件が変わります。契約・着工・入居のタイミングが年をまたぐ場合はとくに、最新情報の確認が欠かせません。

おわりに

住宅ローン控除を最大限に活かすには、「どの区分(性能)の住宅を選ぶか」「自分の納税額でどこまで使い切れるか」の2つを、契約前に確認しておくことが大切です。そのうえで、無理のない借入計画を立て、金利・諸費用・団信を含めた総返済額で住宅ローンを選びましょう。借入先を比較検討する際は、店舗とオンラインの両方に対応し、事務手数料が借入金額の2.20%(税込)の定率型で分かりやすいSBI新生銀行なども、検討に値する選択肢の一つに加えてみるとよいでしょう。控除制度と借入先選びの両面から、賢くマイホーム取得を進めてください。

【解説】 はなFP事務所代表 松本喜子 ファイナンシャルプランナー 松本喜子氏 ファイナンシャルプランナー(CFP®、1級FP技能士)

ホームページ http://hanafp.jp/

岡山県生まれ。岡山大学大学院を卒業。 数少ない、保険などの金融商品を販売しないファイナンシャルプランナー(FP)。 法律事務所で働きながらFP資格を取得。企業内にて数百人のお客様からFPとして家計相談を受け、引き続き中立的な独立系FP会社にて経験を積む。 2010年には娘を出産し、専業主婦と子育てを経験。子育てを通して人生設計の大切さを再確認し、現在は「みんなを笑顔に!」をモットーに、個別相談、講師、コラムの執筆など、FPとして独立して活躍中。