
住宅ローンの収入合算は、夫婦や親子の収入を合わせて審査を受け、1人では届かない金額を借りられるようにする方法です。ただし、合算した人が「連帯保証人」になるか「連帯債務者」になるかで、団信・住宅ローン控除・返済義務の扱いがまったく変わります。
民間銀行の多くは連帯保証型で、合算者は団信にも住宅ローン控除にも入れません。連帯債務型を選べるのはフラット35など一部に限られます。以下、2つのタイプとペアローンの違い、金融機関ごとの条件を横並びで整理します(2026年9月時点・各金融機関の公式情報にて確認)。
収入合算とは?借入額を増やせる仕組み
収入合算とは、住宅ローンの申込者(主債務者)の収入に、配偶者や親子など親族の収入を合算して審査を受ける方法です。ローンの契約は1本のまま、審査で見る年収だけが2人分になります。
合算できる相手や金額の上限は金融機関ごとに異なります。たとえば三菱UFJ銀行は合算額を「申込人の収入の2分の1」までとし、兄弟姉妹での申込みは不可としています。一方、フラット35は合算者の年収を全額合算できます。
収入合算には2つのタイプがある
収入合算は、合算者の立場によって「連帯保証型」と「連帯債務型」の2種類に分かれます。どちらを扱っているかは金融機関によって異なり、両方から選べるとは限りません。
連帯保証型(合算者=連帯保証人)
一方が主債務者となり、もう一方が連帯保証人として収入を合算します。連帯保証人は、主債務者の返済が滞ったときに主債務者とほぼ同じ返済義務を負いますが、次の点に注意が必要です。
- 団体信用生命保険(団信)に加入できるのは主債務者のみ。連帯保証人に万一のことがあってもローン残高は減りません。
- 住宅ローン控除を利用できるのも主債務者のみ。連帯保証人は住宅ローンの申込人ではないため対象外です。
民間銀行の収入合算はこのタイプが中心です。auじぶん銀行・三菱UFJ銀行・SBI新生銀行は、いずれも収入合算を連帯保証の形で扱っています。
連帯債務型(合算者=連帯債務者)
1本のローンを、主債務者と連帯債務者が共同で負う方式です。連帯債務者は最初から主債務者と同じ返済義務を負う代わりに、次のような扱いになります。
- 住宅ローン控除を2人とも利用できる。控除の対象になる借入金は、2人の間で決めた負担割合で分けます。負担割合を持分と合わせずに片方が多く払うと、贈与とみなされることがあります(国税庁 質疑応答事例)。
- 団信は原則として主債務者のみですが、フラット35の「デュエット(夫婦連生団信)」なら2人とも保障の対象になります。借入金利に年0.180%上乗せで、どちらかに万一のことがあれば持分や返済割合にかかわらず残高全額が弁済されます。
連帯債務型を扱うのはフラット35や一部の民間金融機関に限られます。フラット35はドコモSMTBネット銀行(旧・住信SBIネット銀行)・楽天銀行・SBIアルヒなどが取り扱っており、収入合算は連帯債務型になります。
フラット35の収入合算の条件
フラット35で収入を合算できるのは、次の条件をすべて満たす1名のみです(住宅金融支援機構【フラット35】収入合算)。
- 申込時の年齢が満70歳未満
- 申込者本人と同居する(セカンドハウスなどは例外あり)
- 連帯債務者になる
注意したいのが借入期間です。合算者の年収の50%を超えて合算すると、合算者の年齢を基準に最長借入期間が計算されます。機構の例では、申込者30歳・合算者55歳のとき、全額合算なら最長24年、50%以下の合算なら最長35年です。
パート・アルバイトでも安定した収入があれば合算者になれる点は、正社員を条件にしがちな民間銀行との違いです。
ペアローンとの違い
収入合算とよく比べられるのがペアローンです。1つの物件に対して2人がそれぞれ主債務者となって2本のローンを契約し、互いに連帯保証人になります。
2人とも団信に加入でき、住宅ローン控除も2人とも使えますが、事務手数料や登記費用などの諸費用が2本分かかります。仕組みの詳細はペアローンのメリット・デメリットで解説しています。
単独ローン・収入合算・ペアローンの比較
| 比較の観点 | 収入合算(連帯保証型) | 収入合算(連帯債務型) | ペアローン |
|---|---|---|---|
| 契約本数 | 1本 | 1本 | 2本 |
| 合算者の立場 | 連帯保証人 | 連帯債務者 | それぞれが主債務者 |
| 団信の加入 | 主債務者のみ | 原則主債務者のみ(デュエットなら2人とも) | 2人とも加入 |
| 住宅ローン控除 | 主債務者のみ | 2人とも利用可(負担割合に応じて) | 2人とも利用可 |
| 諸費用 | 1本分 | 1本分 | 2本分 |
| 主な取扱 | 民間銀行の多く | フラット35・一部の民間金融機関 | 多くの民間金融機関 |
金融機関ごとの収入合算の条件
同じ「収入合算」でも、方式や合算できる範囲は金融機関で違います。代表的な4つを同じ項目で並べました。
| 金融機関 | 方式 | 合算できる人・上限 | 合算者の団信・控除 |
|---|---|---|---|
| auじぶん銀行 | 連帯保証(連帯債務の取扱なし) | 配偶者・親子(事実婚・同性パートナーも可) | いずれも対象外 |
| 三菱UFJ銀行 | 連帯保証 | 配偶者・親子等(兄弟姉妹は不可)/申込人の収入の2分の1まで | いずれも対象外 |
| SBI新生銀行 | 連帯保証(連帯債務の取扱なし) | 一定の収入のある親族(親子・同性パートナーも可) | いずれも対象外 |
| フラット35 | 連帯債務 | 1名・申込時70歳未満・同居/年収の全額まで | 控除は2人とも可・団信はデュエットで2人とも |
収入合算でどれくらい借りやすくなる?(試算例)
フラット35の返済負担率の基準は、年収400万円未満なら30%以下、400万円以上なら35%以下です。たとえば申込者の年収が350万円なら、年間返済額の上限は350万円×30%=105万円です。
ここに配偶者の年収200万円を合算すると、合計550万円に35%の基準が適用され、上限は192.5万円まで広がります。合算で年収が400万円の線を越えると、基準の割合そのものも上がるため、借りられる額が大きく動きます(仮定のケースで、実際の審査は物件や他の借入れでも変わります)。
収入合算のメリット
最大のメリットは借入可能額を増やせることです。単独では届かなかった物件も検討しやすくなります。
ローンの契約が1本で済むため、ペアローンより諸費用を抑えられる点も利点です。連帯債務型であれば、住宅ローン控除を2人で使える節税効果も見込めます。
収入合算のデメリット・注意点
- 連帯保証型では、合算者は団信にも住宅ローン控除にも入れない。夫が主債務者・妻が連帯保証人の場合、妻に万一のことがあってもローンは減らず、夫が返済を続けます。合算者の死亡・就業不能には、収入保障保険などで別途備えると安心です。
- 合算者も主債務者と同等の返済義務を負うため、離婚や別居のときに契約の整理が難しくなりがちです。
- 2人分の収入を前提に借りるので、育休・退職などで片方の収入が減ると返済が一気に重くなります。合算額は「将来も続く収入」の範囲に抑えるのが安全です。
夫婦でローンを組む方法を全体から比べたい人は、夫婦で住宅ローンを組む3つの方法もあわせて参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 収入合算とペアローン、どちらがよいですか?
A. 諸費用を抑えたいなら1本契約の収入合算、2人とも団信と住宅ローン控除を使いたいならペアローンか連帯債務型が候補です。将来どちらかの収入が減る可能性も踏まえて選びましょう。
Q. 連帯保証人でも住宅ローン控除は受けられますか?
A. 受けられません。連帯保証型で控除を使えるのは主債務者だけです。2人とも控除を使いたい場合は、連帯債務型かペアローンを検討します。
Q. パート収入でも収入合算できますか?
A. フラット35なら、安定した収入があればパート・アルバイトでも連帯債務者として合算できます。民間銀行は雇用形態や勤続年数の条件を設けていることが多いため、申込先ごとに確認が必要です。
Q. 合算者にも団信を付けたいのですが。
A. フラット35の連帯債務型なら「デュエット(夫婦連生団信)」で2人とも保障の対象にできます(金利は年0.180%上乗せ・申込時に2人とも満15歳以上70歳未満)。民間銀行で2人とも団信に入りたい場合はペアローンが選択肢です。
まとめ
収入合算は借入額を増やせる便利な方法ですが、「連帯保証型」か「連帯債務型」かで、団信・住宅ローン控除・返済義務の扱いが大きく異なります。民間銀行の多くは連帯保証型、フラット35は連帯債務型です。
合算者側のリスクを理解したうえで、金利・諸費用・団信まで含めて複数の金融機関を横並びで比べましょう。取扱方式や条件は変わることがあるため、最新情報は各金融機関の公式サイトでご確認ください。
