
住宅ローンを組むとき、「自分はいくらまで借りられるのか」「いくらまでなら無理なく返せるのか」を考えるうえで欠かせない指標が返済負担率(返済比率)です。フラット35を提供する住宅金融支援機構は、実際にフラット35を利用した方を対象にした「フラット35利用者調査」を毎年公表しており、最新は2025年度(2025年4月〜2026年3月の利用者が対象・2026年7月24日公表)の集計結果です。
このコラムでは、返済負担率の基本と実際の利用者データ、そして年収ごとの借入目安を、2026年8月時点の金利水準で整理します。
返済負担率とは?
返済負担率とは、年間の各種ローンの返済総額が年収に対してどの程度を占めているかを示す指標です。住宅ローンだけでなく、自動車ローン・教育ローン・カードローン(キャッシングやリボ払いによる購入を含む)なども合算して計算します(=総返済負担率)。フラット35のご利用条件では、次の基準が定められています。
| 年収 | 総返済負担率の基準 | 年間の返済額の上限 |
|---|---|---|
| 400万円未満 | 30%以下 | 年収300万円なら年90万円(月7万5,000円) |
| 400万円以上 | 35%以下 | 年収500万円なら年175万円(月約14万5,000円) |
※住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」(2026年4月1日現在)より。年収は原則として申込年の前年の収入を証する公的証明書の金額です。
たとえば年収450万円の方なら、年間の総返済額が約157万円(35%)まで住宅ローンを組める計算になります。ただし月々に直すと約13万円の負担で、税金や社会保険料が天引きされることを考えると、年収450万円で月13万円の返済を続けるのは現実的とはいえません。「審査で借りられる額」と「無理なく返せる額」は別物だと意識しておきましょう。
実際の利用者の返済負担率は平均22.8%(2025年度調査)
では、実際にフラット35を借りた人はどのくらいの水準に収めているのでしょうか。2025年度フラット35利用者調査(借換えを除く35,553件を集計)によると、平均総返済負担率は22.8%で、前年度から0.4ポイント低下しました。1か月当たりの予定返済額の平均は12万3,800円、平均世帯年収は716万円(前年度+47万円)です。
審査上限の30〜35%に対して、実際の利用者の平均は22%台にとどまっているのが実態です。

住宅の種類(融資区分)別に見ると差があります。土地の取得費まで借りる土地付注文住宅が26.4%と最も高く、価格を抑えやすい中古マンションは19.7%と最も低い水準です。同じ年収でも、どんな住宅を選ぶかで負担率は5ポイント以上変わります。
なお、この調査の年収は世帯年収(収入合算を含む)で集計されています。世帯主以外の方の収入が含まれているため、契約者本人の年収だけで計算すると返済負担率はもう少し高めに出ることがあります。平均は個々の利用者の負担率を平均したもので、平均年収と平均返済額から割り算して求めた数値ではない点にもご注意ください。
無理のない返済負担率の目安は?
年収から住民税・所得税・社会保険料などが天引きされることを考えると、審査上限の30〜35%ではなく、手取り収入をベースに20〜25%程度に抑えるのが、無理のない返済の目安とされています。上で見たとおり、実際のフラット35利用者の平均(22.8%・額面ベース)も審査上限からは大きく離れており、余裕を持った借り方が選ばれています。
額面の年収に対して20%で借りた場合、手取りベースでは25%前後になるのが一般的です。額面20%=手取り25%前後と覚えておくと、目安がつかみやすくなります。
年収ごとの借り入れ目安は?(金利で大きく変わる)
35年ローン・返済負担率20%・元利均等返済を前提に、年収ごとの借入目安を見てみましょう。ここで重要なのが、同じ年収・同じ返済負担率でも、適用金利が上がると借りられる額は小さくなるという点です。
2026年8月時点では、日銀の政策金利が1.0%程度まで引き上げられ、フラット35(買取型)の資金受取分の金利は年3.290%(借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付きで最も多い金利)まで上昇しています。そこで、低めの年1.000%と、全期間固定の実勢に近い年3.290%の2パターンで比較しました。
| 年収 | 月々の返済額(返済負担率20%) | 年1.000%の借入目安 | 年3.290%の借入目安 |
|---|---|---|---|
| 200万円 | 約3万3,000円 | 約1,180万円 | 約830万円 |
| 300万円 | 約5万円 | 約1,770万円 | 約1,240万円 |
| 400万円 | 約6万6,000円 | 約2,360万円 | 約1,660万円 |
| 500万円 | 約8万3,000円 | 約2,950万円 | 約2,070万円 |
| 600万円 | 約10万円 | 約3,540万円 | 約2,490万円 |
| 700万円 | 約11万6,000円 | 約4,130万円 | 約2,900万円 |
※返済負担率20%・返済期間35年・元利均等返済・ボーナス返済なしでの概算です。諸費用や他の借入は考慮していません。実際の借入可能額・返済額は金利・返済期間・団信などで変わるため、必ず各金融機関のシミュレーションでご確認ください。
表のとおり、金利が年1.000%から年3.290%へ上がるだけで、借入目安はおよそ3割小さくなります。年収500万円なら約2,950万円が約2,070万円へ、880万円ほど下がる計算です。金利上昇局面では「借りられる額」も「総返済額」も大きく変わるため、最新の適用金利で試算し直すことが欠かせません。
返済負担率が基準を超えそうなときの選択肢
試算してみて負担率が高すぎた場合、打てる手はいくつかあります。効果と副作用をあわせて整理しました。
| 対処法 | 返済負担率への効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 頭金を増やす | 借入額が減り、負担率が直接下がる | 手元資金が減りすぎると、諸費用や入居後の出費に対応できない |
| 他のローンを完済・整理する | 合算される年間返済額が減る | カードのキャッシング枠・リボ残高も対象。申込前に整理しておく |
| 返済期間を延ばす | 月々の返済額が下がる | 総返済額(利息)は増える。完済時の年齢の上限にも注意 |
| 収入合算・ペアローンを使う | 分母となる年収が増える | 片方が働けなくなったときのリスク。フラット35の申込みは連帯債務者を含め2名まで |
| 物件の予算を見直す | もっとも確実に下がる | 中古住宅を含めて探すと選択肢が広がる(2025年度調査では中古住宅の利用割合が35.9%と最多) |
よくある質問(FAQ)
Q. 返済負担率は年収のどの数字で計算しますか?
A. 一般に税込みの年収(額面)で計算します。フラット35では原則として、申込年の前年の収入を証する公的証明書に記載された金額(給与収入のみの方は給与収入金額)が使われます。ただし手取りは額面より2〜3割少なくなるため、無理のない返済計画を立てるなら、手取りベースでも20〜25%程度に収まるかを確認すると安心です。
Q. 住宅ローン以外の借入も影響しますか?
A. はい。自動車ローン・教育ローン・カードローン(キャッシングやリボ払いによる購入を含む)などの年間返済額も合算して審査されます。収入合算者の分や、賃貸予定・賃貸中の住宅に係る借入金も含まれます。審査前にこれらを完済・整理しておくと、住宅ローンに回せる枠が広がります。
Q. 返済負担率の基準ギリギリまで借りても大丈夫?
A. 審査に通ることと無理なく返せることは別です。教育費の増加・金利上昇・収入減なども見込み、余裕を持った借入額に抑えるのが安全です。実際のフラット35利用者の平均が22.8%(2025年度)である点も参考になります。
Q. 変動金利で借りる場合も、返済負担率は借入時の金利で見ておけばよいですか?
A. 審査上の返済負担率は各金融機関の定める審査金利で計算されますが、家計の目線では「金利が上がったらどうなるか」まで見ておくべきです。上の表のとおり、金利が2ポイント上がると同じ返済額で借りられる額は3割ほど減ります。裏を返せば、借入額を変えずに金利だけ上がれば、それだけ月々の返済額が増えるということです。借入時の金利だけでなく、1〜2ポイント高い金利でも家計が回るかを試算しておきましょう。
Q. 返済負担率をクリアすれば審査に通りますか?
A. 返済負担率は審査項目の一つにすぎません。勤続年数・雇用形態・信用情報・健康状態(団信)・物件の担保評価なども審査されます。フラット35では融資率が9割を超える場合、返済の確実性等をより慎重に審査するとされています。
最後に
住宅ローン審査で借りられる金額と、実際に無理なく返済できる金額には大きな差があります。返済可能な金額をしっかり計算し、購入希望物件との差は頭金で埋めるという考え方が基本です。とくに金利が上昇している局面では、最新の金利で総返済額まで試算しておきましょう。
また、借入先を選ぶ際は金利だけでなく、事務手数料・保証料・団信などの諸費用も含めた総コストで比較するのがポイントです。たとえばSBI新生銀行は保証料0円・一部繰上返済手数料0円で、融資事務手数料は借入金額の2.20%(税込)の定率型と費用の内訳が分かりやすく、店舗相談とオンライン手続きの両方に対応しているため、はじめての方も検討しやすい選択肢の一つです(最新の金利・諸費用は公式サイトでご確認ください)。
同調査では、年収倍率についての発表も行っており、本サイトでは別途紹介記事を公開しています。
