世界情勢と金融市場の不確実性を表すイメージ

※本記事は2017年8月19日時点の情報をもとにした内容です。当時のトランプ米政権をめぐる一連の動きと、住宅ローン金利への影響の見方を記録としてまとめたものであり、その後の情勢や現在の金利を示すものではありません。

トランプ大統領が誕生して7カ月近くが経過しましたが、政権を取り巻く環境は厳しさを増しています。「トランプリスク」「トランプショック」と表現されるような事態が実際に発生するのか、発生した場合の影響などを詳しく解説します。
まずは、トランプ大統領就任以降の主な騒動を振り返ります。

 

1.中東・アフリカ7カ国からの入国制限

2017年1月27日、トランプ大統領は中東およびアフリカの特定7カ国の国民の米国入国を禁ずる大統領令に署名しました。「アメリカ国民をテロから守る」という名目でしたが、国内外で大きな波紋を広げ、結果的にシアトル連邦地裁やサンフランシスコ連邦高裁などで大統領令の一時差し止めが決定されました。

 

2.トランプ大統領の側近、フリン大統領補佐官の辞任

トランプ大統領の側近であるマイケル・フリン氏が、就任前にロシア大使と複数回にわたり対ロシア経済制裁について協議していたことが明らかになり、2月13日に辞任に追い込まれました。これは民間人が外交交渉に介入することを禁じる法律に違反したためであり、当初トランプ大統領は擁護していましたが、こうした交渉はしていないという虚偽の報告をホワイトハウスに行っていたため、結果的に更迭されたものです。

 

3.オバマケア代替法案の採決断念

オバマケアの廃止と代替制度「アメリカン・ヘルス・ケア・アクト」をアメリカ議会下院で採決する予定でしたが、可決の見込みが立たないことから、採決直前の3月24日にトランプ大統領は採決の断念を判断しました。
当時はこの出来事で大きな混乱は起きていませんでしたが、今後のトランプ政権の動向を占ううえで極めて大きな出来事といえます。
オバマケアの廃止と代替制度の導入は、トランプ氏が所属する共和党にとっても異論のない方向性でしたが、共和党内部の反対で可決できないという事態になり、今後の重要法案を可決していけるのか不透明な状況でした。
トランプ氏の公約実現には立法を司る議会の協力が必須であり、共和党を説得していく必要があります。トランプ氏がもともと共和党の主流ではないために起きている問題ともいえますが、共和党との調整がうまくいかない場合には、掲げる多くの公約が実現できない可能性も出てきます。

4.シリアへの軍事介入

シリアが自国民に対し化学兵器による攻撃を行ったことが明らかとなり、トランプ大統領はシリア空軍の基地にミサイル攻撃を行いました。これまで米国第一主義を掲げ、国外の紛争への介入に懐疑的であったことと矛盾する対応として、大きな波紋を広げました。またこの攻撃が中国の習近平国家主席との会談中に行われたことも、中国政府への牽制という意味で大きな衝撃を与えました。

 

5.北朝鮮近辺での空母派遣

北朝鮮の相次ぐミサイル発射実験や核開発に対し、トランプ大統領は原子力空母を北朝鮮周辺に派遣する決断を行いました。北朝鮮の朝鮮人民軍創立85周年にあたる4月25日に北朝鮮が動きを見せ、米国が軍事行動に踏み切るのではという緊張が世界に走りました。

 

6.FBIのコミー長官の解任

5月9日、トランプ大統領が突然FBIのコミー長官を解任したと発表しました。トランプ氏には、大統領選挙の期間中からロシア政府の支援を受けていたのではないかという疑惑が付きまとっていました。実際、選挙で競い合ったクリントン候補に不利な情報がハッキングにより流出するなどの問題が起きていました。またトランプ氏がビジネス界出身であることから、ロシアとの経済的なつながりに対する懸念も問題視されてきました。この問題は就任後も連邦捜査局(FBI)によって捜査が続けられていましたが、トランプ氏が捜査の中止を求めたり、自身への忠誠を求めたりするなど、捜査機関への介入が取り沙汰され、過去に大統領職を辞任したニクソン氏と比較する論評も見られました。

 

7.イスラム国に関する機密情報をロシアに漏洩か?

コミー長官の解任というニュースから間もない5月15日には、トランプ大統領が5月10日にホワイトハウスでロシア外相や駐米大使との会談において、アメリカの同盟国から受け取ったイスラム国に関する機密情報を、提供元の同盟国の許可を得ることなく開示したという問題が発覚しました。

 

8.気候変動に関するパリ協定からの離脱

世界約200の国や地域が参加するパリ協定からの離脱を、6月2日に表明しました。トランプ氏は地球温暖化そのものを否定しており、自然科学への予算大幅削減など科学分野を軽視する動きを顕著にしています。

トランプ氏はアメリカでの雇用増大を目指し、重化学分野の経済対策として温暖化対策を邪魔者扱いしている、というのが本音といえるでしょう。

この動きに対し、カリフォルニア州、ニューヨーク州、ワシントン州の州知事は州政府が独自にパリ協定を推進するとしており、米国内の分断がここでもあらわになっています。

 

9.ロシア疑惑でトランプ氏の長男を調査へ

大統領選挙中の2016年6月に、トランプ大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏が、クリントン候補に不利な情報を得るためロシア人弁護士と接触していたと報道されました。米大統領選干渉疑惑を調べる上院情報特別委員会が、同氏からのヒアリングを実施するとしています。

また、その後、このロシア人弁護士がロシア連邦保安局(FSB)の代理人であったとも報道され、波紋を広げています。

 

10.トランプ一族や大統領幹部の事業も捜査対象に

報道によると、モラー特別検察官がトランプ大統領や大統領選での幹部の会社、ロシア事業を捜査対象としているようです。資金や人脈などを洗い出しているとされ、トランプ陣営はこれに対抗するためモラー特別検察官の身辺を調査しているともされており、ロシア疑惑の捜査は混沌としてきています。

 

11.白人至上主義団体と反対派の衝突

アメリカ南部のバージニア州で8月12日に白人至上主義団体とこれに反対する団体の衝突が起き、反対派の女性1名が亡くなりました。トランプ大統領が白人至上主義者を明確に批判しなかったことから、米国内で非難される事態となりました。経済問題で産業界と協議するために設置した助言組織から、多くの企業トップが批判の意味で辞任するなど、大きな混乱となりました。事件後の世論調査では、トランプ大統領の支持率が当時の最低水準となった模様です。

 

12.最側近のバノン氏を更迭

大統領選挙の選挙対策本部の責任者を務め、トランプ大統領誕生に貢献したバノン氏が、8月18日に解任されました。バノン氏は対中強硬派であり、保護貿易・移民対策を推し進めてきた経緯があります。同氏の更迭でトランプ政権が現実路線の政権運営を行えるかが注目されました。

 

特に、トランプ政権をめぐるロシア関連の疑惑には注意を払う必要があったといえます。トランプ大統領は就任後もFBIやCIAなどの捜査機関を敵視する発言をしており、政権を揺るがす要因が続く可能性がありました。ニクソン氏が辞任に至ったウォーターゲート事件では、のちにFBI副長官がリークを行っていたことが明らかになっています。

トランプ政権は、共和党の中で見ればマイノリティーであり、政策実現には共和党主流派との連携が必須となりますが、オバマケア代替案をめぐる動きを見ても、当時はこうした実績は出せていませんでした。今後の展開は予測が難しいものの、世界の政治・経済の中心であるアメリカの政治が揺らぐことは、世界経済にとってプラス要因にならないことは間違いありません。

今後もトランプ政権を取り巻く騒動が続いた場合には、リスクオフの動きが発生し、株価の下落や債券高(金利低下)といった現象が起こり、住宅ローン金利が低下する可能性も十分にあります。